CCPの中銀アクセスと規制の役割

CFTCのBehnam委員長から、米国の顧客にサービスを提供するすべてのCCPが連邦準備制度の預金口座にアクセスできるようにすることを明確に支持した。コロナウィルス感染拡大、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、市場変動がかつてないほどに大きくなったことを受けてこうした思いを強くしたということだ。

CMEやDTCCなど米国にとって重要なCCPについてのみ認められている措置であるが、これをLCHやその他外国CCPにも拡大するということだ。日本のCCPの場合は日銀口座が使えるためあまり問題はないが、確かに余剰資金をレポで運用してリスクを増やすよりは、中銀預金にしておいたほうがシステミックリスク削減につながる。

CCPがここまで重要なインフラになってくると、こうした安全性を高める措置は市場全体にとっても歓迎されるべきことだろう。特に昨今のコモディティの市場変動は、従来の想定を大きく超えている。それによって巨額のマージンコールが発生しているが、今後企業のデフォルトがCCPからのマージンコールで引き起こされるケースが増えていくだろう。そしてその過程において担保融通が滞ると金融システム全体に悪影響が及ぶ。

さすがにマージンコールが巨額になった場合に中銀サポートを得たいという案は却下になりそうだが、中銀以外の銀行がこうした証拠金拠出を目的とした融資や保証提供が急務になってくるだろう。また、ことコモディティに関しては、株式のようなサーキットブレーカーを導入し、一日の価格変動が一定の範囲内に収まるようにしておく必要もある。価格操作は望ましくないという意見もあろうが、巨額に担保拠出を一気に求められた場合には、その証拠金の工面に数日を要することがあるからだ。こうした仕組みがないと、証拠金計算モデルがはじき出す必要証拠金の額も、危機時に大きく膨らんでしまう。

その他、CCPに持ち込む取引のポジションリミットを設けたり、割増証拠金を求めることにより、一部の参加者にリスクが集中しないようにしなければならない。ただし、清算集中規制のない株式デリバティブやコモディディ先物などは、取引所外のOTC取引についても合算して考えなければならない。これはCCPでは取得不可能な取引だが、こうした相対取引のポジションの偏りが、CCP取引に対しても影響を及ぼすことが明らかになった。

本来はこれがすべて把握できるのは規制当局なのだが、現状はここまで理解が進んでいない。そもそも取引報告規制によって集められたデータが有効活用されていないという問題もある。既存の当局内にデータ分析部隊をつくるよりは、一部海外当局が始めたように、データの分析を外注するということも必要なのだろう。各国当局が独自の基準でデータを集めるのではなく、国際的に合意したフォーマットで、世界中のデータを集め、分析できるようにしていくことが重要である。