日本は間接金融中心だったため、社債市場の育成が遅れたというのは何年も言われてきたことである。JSDAで社債市場の活性化に関する懇談会が開かれたり、業界を上げて様々な努力が何十年も行われてきたが、結局大きな成果を得るには至っていない。
社債発行が少ないので活発な流通市場も育たず、社債レポ市場もないため、満期保有目的の投資以外はあまり投資家ニーズもなかった。CDSである程度ヘッジできるようになったとは言え、CDS市場の流動性も海外に比べると極端に低い。
業界でもあきらめムードに近いものがあったのだが、この傾向に若干変化が表れてきているように見える。大型起債のニュースが近年多かったので、久々にJSDAのデータを拾ってみると、以下のように年間発行額が15兆円を超えている。何となく7、8兆円が平均で多い時で10兆円という感覚だったので15兆円というのは頭一つ抜けた感じであり、しかもこれが2年続いている。
もしかしたら銀行との関係にも変化が起き始めているのかもしれない。昨年末の大型起債も順調に消化され、投資家層も厚くなってきた感がある。昨年大型投資時には、中央公的、生損保、投信、系統、銀行で投資家層の7割を占めており、残りが地銀、海外その他と報じられていた。投信に組み込む動きと海外投資家のニーズが増えているのかもしれない。
それでも米国に比べると微々たる発行量だが、海外のように社債市場が活発化すると、銀行と企業の力関係も変化してくることが期待される。低格付債市場も活発化すれば、新興企業の資金調達の道も開かれるようになる。
ドル建て債券になると海外投資家が容易に投資できるが、円資金が必要な場合は通貨スワップが必要になる。このコストを考えると、円債でニーズが賄えれば企業にとっては望ましい。ほとんど金利のつかない銀行預金にしておくより、きちんと利息のつく社債投資を行いたいという個人も出てくるだろう。そして日本の社債をベースにしたETFや、リスク分散の観点から円建て資産を持ちたいという海外投資家も入ってくるかもしれない。
そうすれば、セカンダリー市場での売買も活発化し、レポ、社債ショートのニーズも高まり、CDS市場も活発化するのではないだろうか。