データを制する者は金融を制す

ロンドン証券取引所がRefinitivの買収に関して、反トラスト法の観点から承認を取り付けたとの報道があった。S&PのIHS Markitの買収のニュースも同じく報じられている。これで、Bloomberg、LSE/Refinitiv、S&P/Markitといったデータプロバイダーの勢力図がはっきりしてきた。他にもIntercontinental ExchangeによるEllie Mae買収、ドイツ証取によるInstitutional Shareholder Servicesの買収などもある。

MarkitWireと言えば日本の金融業界の方もなじみがあるかもしれないが、Markitも急速に成長したものである。

金融取引が急速に電子取引に移行し、そのデータをもとにアルゴ取引等を行うようになってきたため、取引データは金鉱のようなものである。金融マーケットデータに使われるお金は2019年には$32bnというコンサル会社の調査も報じられていたが、その金額も年々増加している。COVIDの影響も受けず引き続き業容拡大が見込まれる分野であり、IHS Markitなどの情報プロバイダーの株価も軒並み上昇基調にある。

あまり日本ではこの分野での成長がみられないが、今後可能性があるとすれば東証やJSCC、ブローカー、Quick社などが候補になるだろうか。銀行系やシステム系の会社の子会社も様々な試みをしているが、海外の動きとは若干異なる方向を志向しているように見える。

海外では、SDR(Swap Data Repository)報告、取引の即時報告であるリアルタイムレポーティング、取引プロセスのSTP化についてのガイドライン、SEF(Swap Execution Facility)などの電子取引規制によって、取引のデータ化が進んでいる。

日本でも同様の規制はあるのだが、ETP(電子取引基盤)規制は中途半端な感が否めず、米国SEFのような広がりは見せていない。電子取引というよりは、単なるデータ入力規制という気もする。集めたデータの利用もほぼ行われていないと予想される。

取引報告規制も、米系または米国スワップディーラー登録をしている銀行が関係している取引であれば、各種分析が可能だが、日本の金融機関の取引データはなかなか手に入らない。こうした分野の発展にはやはり規制サイドの後押しも欠かせない。

COVIDにより、米国債や米国社債の電子取引が急速に加速しているが、Yensai.comというものはあるものの、日本国債の電子取引はかなり限定的なものにとどまっている。社債に至っては流通市場がかなり限定的で、ショートもできない。

国際金融ハブ構想もあるが、税金や英語サービスの強化だけを語っていても片手落ちで、そもそもこうした金融市場の流動性を高めることが最も肝要だと思う。ここから相当奮起しないと、または日本の金融は世界から取り残されてしまうことになるのではないだろうか。

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