MVAを加味したトレーディング

SIMMの計算をおさらいしていて思ったのだが、意外と相関の影響が大きい。今回は$10mmのドル金利スワップとJPY1.5bnの円金利スワップの二つだけがあると仮定してIM計算を行ってみた。両方とも同じ年限と仮定してSwapの年限毎にIM金額をプロットしてみる。本来IRSはCCPで清算しなければならないが、ここでは相対としてSIMMの計算を行う。金利は12/18のOISカーブに適宜線形補間を行ってSensitivityを計算した。

結果は上の通りで、リスクウェイトの差があるため、ドル金利スワップのIMは円金利スワップの2倍近くになっており、単独で30年スワップだとドル金利スワップが$1.2mm、円金利スワップが$630kとなっている。両方とも払い(受けでも同じ結果)として一緒のポートフォリオに入れてIM計算をしたのがグレー、オフセットする反対方向の取引として計算したものが黄色である。

30年スワップでみると、同方向なら$1.5mm、オフセットする方向なら$1.1mmとなっている。これは相関係数が0.35になっているからだが、もう少し相関が高くても良いような感覚に陥ってしまう。

ここで注意すべきは、Separateと書いた薄いブルーの線だ。これはドル金利スワップと円金利スワップを異なるカウンターパーティーと取引した場合、つまり同じポートフォリオに入っておらずネッティングができない場合である。30年だとIM合計が$2.6mmに跳ね上がる。

つまり、こうした二つの金利スワップを行うなら、同じカウンターパーティーと行った方がIM的には有利ということだ。SIMMのVarsionが変わる時に相関係数が0.35から増えればさらにその効果が大きくなる。当然取引を集中させてしまうと50億円のIM Thresholdを超えてくるので、ある程度分散したほうが良いが、IM Thresholdを超えているカウンターパーティーが多い場合は、極力取引を集中させた方がIMは少なくなる。これがMVAの計算が複雑になる理由である。また、集中リスクが増えるため、SA-CCRなどの資本が増えたり、大口リミットに抵触する可能性もある。

ただし、IMの最適化に参加している場合は、こうした集中リスクを後で減らし、IMも減らすことができるので、MVAをフルでチャージするのはやりすぎということになる。最適化に参加していないところはNovationや解約をしないとポジションが移せないので、MVAを考慮するのが正しいのだろうが、ここまでの計算を精緻に行うのは進んだシステムがないとかなり困難だろう。またSIMMのVersion変更時にパラメーターの変更があれば、その時にMVAも変わってしまう。

今回は相対を仮定してSIMM計算を行ったが、実際はCCPでクリアされる取引なので、IMの水準や相関の前提はCCPによって異なる。AIでかなりのことができるようになってきたので、こうした各種パラメーターを考慮した上でクリアするCCPや取引相手を選ぶ仕組みなども作れるのかもしれない。