バーゼルから、「ストレス期における銀の資本及びバランスシート管理」についてのワーキングペーパーが出ており、金融庁のホームページでも紹介されている。銀行の資本管理のモデル化を試みたものなので、若干難解な文書ではあるが、結論はいたってシンプルである。
銀行は平時およびストレス時において、能動的に資本計画、資本管理を行っていることが実証され、資本比率は急速に向上させることはできないという従来の仮説に異論を唱えている。銀行は、ストレス時であっても資本増加、利益留保、資産売却、リスクウェイトの最適化、不良債権の削減などの手段を通じて資本を能動的に調整できるとしている。
銀行が短期間で資本水準を調整できなという従来の仮説も明確に否定されている。特に資本制約が大きい銀行ほど、様々なツールを使って能動的に資本調整を行っていることも証明されている。
考えてみれば明らかなのだが、昨年末のように銀行のGSIBスコアが急上昇した時は、一部の取引を止めて、ひたすらコンプレッション、資本最適化や資産圧縮を進める銀行が多かった。GSIBスコア以外でもレバレッジ比率やNSFRが基準以下に下がりそうなときは、大銀行は平気で取引を圧縮しにかかる。この辺りは欧米の銀行の方がドラスティックに動く傾向があるが、重要顧客であったとしても何とか説得して取引削減を推し進める。
顧客関係を重視するアジアでは、表立って取引を減らすとは言えないので、プライスを悪化させて取引がつかないように調整するところが多い。相手に気づかれないように行っているだけで、アジアの顧客だけを優先して取引することもできないため、結局はグローバルと同じことをやっていることになる。
このペーパーでも、こうした慣行が確認されたといってよいだろう。そして、監督当局としても、銀行がある程度の柔軟性をもって資本不足に対応できるという前提で銀行監督を行っていくべきだという主張にも読める。そして、高い成長率を維持している銀行は、資本管理をより頻繁かつより大規模に行う傾向があるとされている。
つまり、こうした資本管理ツールを数多く揃え、ストレス時には適切に行動することが重要ということだ。日本でもROE経営が叫ばれるようになったので、こうした資本管理の重要性はますます高まっていくことだろう。