BISのTriennial Central Bank Survey の金利系商品についての統計を見ている。まずは全体像から。金利商品は2019年のFRAの急増がアノマリーとなっているが、それを除けば順調に右肩辺りで成長しており、特にここ3年の伸びが著しく、トータルで3年前対比約60%増となっている。2019年のFRAはよく覚えていないのだが、まだ4月だとコロナ前なので、3月のFOMCで利上げ収束観測が出てFRA-OISスプレッドがタイトになった時期だろうか。
為替と異なるのは通貨ごとの取引量である。昨今ではUSDではなくEURの金利商品が最大の取引量となっている。特にこの3年でEURは約2倍に増えている。さらに顕著なのが日本円で、なんと7.8倍へと急増し、AUDを抜いて第四位となった。他のCCPのデータなどを見ても同じような伸びが確認できる。GBPを抜いて三位になるかもという期待もあったが、意外とGBPも健闘しており、約3倍と取引量が増えている。
取引主体別でみると、圧倒的にその他金融の割合が大きく、市場全体の75%を超えている。金利スワップに関しては、既に銀行中心の取引から、マーケットメーカーやヘッジファンド、バイサイドへと主役が移っている。
取引地域についてみてみると、圧倒的に英国が強い。やはりBrexit後も金利に関してはロンドンの地位が強い。日本も3.5倍になっているが、かなり小さく、オーストラリアやシンガポールにも及ばない。ドイツが地味に2.4倍に伸ばしているのも注目だ。
YCCの下で日本円金利トレーディングは終焉を迎えたという声も多かったが、政策変更によりようやく日本円本来の姿に戻ってきた。海外からは開かれていないというイメージが付きまとっているが、資産運用立国を目指す金融庁の後押しもあり、注目度が高まり、日本への旬出も少しずつ増えてきた。他国の状況を見ていても、やはりこうした市場づくりには国としての後押しが欠かせないのだろう。
3年ごとに公表されるBaselのTriennial Central Bank Survey が出ているので、今回も簡単にまとめてみたい。まずは、為替取引から見てみる。このデータは4月の一日平均の取引量を調べたものだが、4月というとTrump Liberation dayのあった月である。したがって、通常より取引が多かった可能性もあるので、少し割り引いてみる必要があるかもしれない。
まずは全体の取引量を見てみると、以下のようにSpot、Fowardを中心に3年前の約30%増になっている。中でもForward、通貨スワップが伸びており、伸び率でみるとOptionその他も倍以上になっている。一方、FX Swapがほぼ横ばいなのも興味深い。
取引主体別にみるとその他金融との取引が最も伸びているが、ここはヘッジファンドや銀行以外のマーケットメーカーが中心だろう。
次に通貨スワップにフォーカスしてみると、約40%の伸びで、その他金融の伸びが大きい。また、実額は小さいものの、非金融も3倍近くに伸びている。債券発行や実需ヘッジなど、事業会社のフローも増加していたのかもしれない。
通貨ごとの取引量を見ていると、ドルが依然として強く、その傾向はむしろ強まっているように見える。円は第三位の地位を保っているが、中国元やスイスフランの伸びが大きくなっている。
取引される通貨ペアを調べてみると、USDJPYはUSDEURに次ぐ第二位のペアとなっているが、驚くことに第三位がUSDCNYになっている。USDGBPなどを一気に追い越した形だ。
取引執行を地域別にみると、以前英国が強く、全体の38%で首位、次に米国が19%で続く。そのあとはシンガポールと香港で、二つ合わせると米国とほぼ同じ水準になっている。為替市場に関しては、英国、米国、香港+シンガポールという3極になっており、日本の割合は3.5%にとどまっている。香港は頭打ちになっているが、シンガポールの躍進が進んでいる。
トランプ関税ショックの影響もあるだろうが、為替の取引量が順調に伸びていることが確認できる。ここからは特にドル離れは見て取れない。景気減速にも関わらず中国のプレゼンスは引き続き上がってきている。市場という意味ではアジアはシンガポールが為替の拠点としてはメインになってきているように見える。取引主体も銀行からその他のプレーヤーへの分散がみられる。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。