Clarusのブログで以前為替のIM Optimizationについての記事があったのをよく覚えていたのだが、5年後になって新たな記事が上がっている。
取引増と市場変動の拡大を受けて当初証拠金(IM)の上昇が話題になっているが、IM Optimizationは複数参加者間でIM削減を図ろうというものである。
少しおさらいをすると、TWD、INR、BRLのようなNon Deliverableな通貨の場合は、NDFによって取引が行われ、差額がUSDなどの通貨で決済される。一方JPYやEURのようなDeliverable 通貨は、普通DFとしてブックされ、USDを払ってJPYを受けとるといった決済が行われる。証拠金規制で対象なのはNDFだけで、DFはIM規制の対象外となっている。
したがって、受渡可能な円のような通貨でNDFがそれほど取引されることは想定されていなかったのだが、証拠金規制のおかげでこれが増えてきている。証拠金規制のIM計算はSIMMが使われるが、このSIMMを減らして担保コストを下げようというニーズが強まっており、これにG10のNDFが使われているというのがこのブログの仮説だ。
通貨オプションや仕組債ヘッジなどで為替リスクが発生すると、これらの取引は証拠金規制の対象であるため、IM拠出が必要となる。これを減らそうと思うと、例えばJPYロングになっているためにSIMMが大きくなってきた時はJPYショートを入れればSIMMが減るはずである。しかし、通常の通貨フォワード取引でロングを減らそうとすると、証拠金規制対象外なのでSIMMを減らすことができない。これを解決するには、DFではなくNDFでフォワードをブックすればSIMM対象なので、IM拠出額を減らすことができるというロジックだ。
そこでこのブログではNDFがいつ取引されたかに注目している。ブログ中のグラフを見て頂ければ一目瞭然だが、火曜と木曜に取引が集中している。木曜はUSDEUR, GBPUSD, AUDUSD, USDJPY, USDCHFに限られる点も紹介されている。これらの取引に関連している市場参加者の方はこれが何を意味するかはもうお分かりだろうが、これらがIMを減らすためのIM Optimizationによって生成された取引だろうとこのブログでは分析している。特に通常の取引としてはG10 NDFはあまり見られないが、火曜と木曜だけにこれが多いのは明らかにIM OpmizationでNDFが使われることを示唆していると書かれている。
そして、米国のSDRに報告された取引のうち昨年Q4では、火曜に$750bn、木曜に$450 bnのトータル$1.2tnのNDFが為替の証拠金削減のための取引としてブックされていると推測している。そして、これがすべてOff Platformで行われており、満期が2週間と3週間に集中しているというのもFX Optimizationである可能性を高めているとしている。
つまりドル円のようなDeliverable通貨だったとしてもNDFが盛んに取引されており、それはほとんどがIMを減らすための取引という結論である。なかなか面白い分析なのではないだろうか。