英国のCCPガイダンス修正案

英国中銀(BOE)が市場の安定化のため、CCPの新たなガイダンス策定作業を行っており、今はそのコメント期間となっている(期限は今年11/18)関税ショックによって変動証拠金が多いところで149%増、当初証拠金も全体で3.6%の増加となっており、突如証拠金を手当てする必要性が市場のボラティリティを大きくするのではないかというのはもっともな懸念である。

BOEから出ている実際の文書はEnsuring the resilience of CCPsというタイトルで公表されているが、非常に長文で内容も多岐にわたる。もともと欧州EMIR規制で定められてたものを英国版EMIRとして援用しているが、今後独自色が強まる可能性もある。

まず目を引くのは、当初証拠金についての提案である。CCPの証拠金計算手法の詳細を開示し、市場参加者が必要担保額の増加を前もって予測できるようにするという提案が含まれている。そして、これを既存の清算会員のみならず、クライアントクリアリングの顧客、または潜在的な参加者に対しても公開するよう提案している。内容的には、モデルの設計、運用、前提とその限界、主要パラメーターの詳細などの開示が求められている。各参加者側でも同じモデルを構築できるレベルの情報ということなのだろうが、大手のCCPでは概ね対応済の内容かと思われる。

変動証拠金については、日中証拠金の頻度を上げることはリスク管理上重要と認めつつ、参加者の流動性に影響を与えることから、日中コールのプロセスとタイミングに関する情報提供を要求している。そして、プロシクリカリティを評価するための分析、ガバナンス等の悌吾を義務付けている。これらは、裏を返せば、市場参加者がCCPのモデルをよく理解して、自らの流動性計画に織り込むようにというメッセージとも取れる。

更に、このブログでも主張してきたポーティングの実効性確保のための提案も数多く盛り込まれている。実際に破綻が起きたときに、2日といった短期間で他のブローカーにリスク分析を依頼し、ポジションを引き受けてもらうのは、極めて困難だと思われる。このため、今回は破綻訓練にポーティングを含めることを義務付けるよう提案がなされている。そして、顧客の同意なしにCCPがポーティングを開始できるようにするという提案もある。これを嫌がる顧客はいるだろうが、確かにこれができないと、オムニバス口座の1人の顧客が同意しなかったために、誰もポーティングが行えないという懸念があるため、安定的にデフォルト処理を進めるには不可欠なのかもしれない。

その他様々な提案が含まれているが、時間のある時にもう少し読み進めてみたい。