トランプ前大統領が当選してから、銀行規制を巡る環境は大きく変わりつつある。すでにSECトップのGensler氏が1月に辞任するとの報道が出ており、FDICのトップであるGruenberg氏も1月に辞任するようだ。ここまで素早く人が変わるとは、つくづく米国というのはすごい国である。
11月20日(水)のHouse Financial Services Committee(下院金融サービス委員会)において、規制当局サイドから、新たなルール作りの開始はトランプ次期政権が発足する来年以降になるだろうという発言があった。しばらくの間は、新たな銀行規制の導入は見送られるとの見通しが支配的になってきている。
一方FRBはPowell議長、Barr副議長ともに辞任することはないと言っているが、これは中銀の独立性を考えたら当然のことではある。それでもBarr副議長は少し前にBasel III Endgameの緩和についてアナウンスをしたばかりであり、今回の委員会でもその立場を貫いている。Yutubeで、別の委員からこの緩和は根拠がない、銀行に屈したのではないかと指摘された際に、緩和を正当化していた姿を見ると、少しリーズナブルにふるまおうとしているようにさえ見える。
いずれにしてもFDICとOCCも共和党が勢力を持つことになるだろうから、規制をめぐる状況は大きく変わることとなる。
欧州も決済期間のT+1化に向けて動き始めた。この度、ESMAから、2027年10月11日がT+1化のターゲットとして示された。9月にアナウンスをした英国に合わせたものと思われる。
11月や12月だと休暇や年末作業で忙しくなるため10月を選んだようだ。大抵の金融機関は週末にシステム更新作業を行うため月曜が選ばれることが多いが、四半期末初めての月曜は避け、2週目の月曜が選ばれた。こうなるとアジアが最初に影響を受けることになるが、これはいつものことである。これに応じて、関連する決済関連の法律やガイドラインの更新が行われるとのことだ。
米国のT+1化が終了していることもあり、同じような作業になるためそれほど大きな混乱にはならないものと思われる。米国と欧州は事務フローがかなり似通っているので、日本や中国、インドといった国でプロジェクトを立ち上げるのに比べると標準化や自動化も進んでいるため、作業がしやすい。
またこれに併せて一連の事務フローが変わることになるが、一層システム化、自動化の流れが加速することになる。一昔前であれば、顧客の様々なニーズに細かく応えることに重きを置いていたこともあったかもしれないが、昨今では、一律同じ事務フローで、標準化されたプロセスを自動的に行うことが最優先されるようになっている。そして、できるだけ人の手を介さないような事務フローが求められる。
システムコストはかなり大きくなってきたが、その分人件費が削減されているのと、何と言っても人為的ミスが減ってきているのが大きい。規制も極力システム化、自動化を促進するようなものが多くなっているので、金融はますます装置産業化してきたが、ちょっとしたトラブルが莫大な影響を及ぼすこともあるため、この流れは変わらないだろう。
日本には。あまりSTP化を促すような規制はないのと、顧客のカスタマイズ要望に応えなければならないことも多いため、自動化の進み具合は若干遅い。システム開発に莫大なコストをかけるよりは人海戦術で対応しようというケースも多いように思う。
ただ海外のシステム化の動きを見ていると、取り残されるリスクもあるので、人が行ってきた作業のシステム化をもう少し進めていった方が良いように感じる。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。