NDFのクリアリング

Clarusのデータによると、NDFのクリアリングが増えている。特に今年に入ってからの伸びが著しい。NDFはNon Deliverableなので、TWDとかKRWといった通貨が多いのだが、上位5通貨で85%を占めている。

グラフを見るとわかりやすいが、一日平均$50bn程度だった取引量が、$65bnまで増えてきている。よく見ると本来Non DeliverableではないJPYやEURが入っているのに気づかれると思うが、個人的にはここからJPYやEURといったDelivarableな通貨のNDFがどれくらい増えてくるかに興味を持っている。

当然こうした通貨は、普通の為替フォワードを取引すれば証拠金規制の対象外なので、ファンディングコストを考えるとクリアリングするメリットはない。しかし、取引相手がCCPに変わるので、カウンターパーティーリスクがなくなり、その分所要資本も減る。

昨今では、CCARなどのストレステスト、G-SIBスコア、クレジットリミット、資本コストなどが重要になってくるので、IMのコスト増につながったとしてもリスクや資本を減らせるので、クリアリングのニーズも出てきている。ただし、ファンディングコストの計算は容易でも、資本コストの計算に手間取ってなかなか前に進めないディーラーも多いようだ。

一応LCHのSmart Clearingはこうしたニーズに応えるために、すべての為替取引をクリアするのではなく、ちょうどこうしたリソースが最適化できるように一部取引のクリアリングを行う仕組みである。利用は伸びているうだが、まだクリティカルマスには届いていないようだ。ただ、一旦大手ディーラーが使い始めると、一気に爆発的に使われ始める可能性はある。

最近では急激な市場変動が大きくなり、VaRやPEモデルではこうしたテイルイベントをカバーできないという批判が高まり、ストレスシナリオをベースとしたリスク管理が重要になってきており、これがビジネスの最大の制約となりつつある。特に為替は一方向にポジションが傾く傾向もあり、為替レートが一時的に急変動した場合のストレスロスはかなり大きくなる。

このため、相対取引の為替フォワードから発生するデルタを、逆方向の為替取引で打ち返し、もともとのデルタをNDFでCCPと構築するという取引が有効になる。こうすると、相対取引の相手方に持っていたデルタがニュートラルになり、CCP向けのデルタに置き換えられる。CCPに対しては、従来必要のなかったIMが必要になるが、相対取引にかかっていたカウンターパーティーリスクがなくなるため、信用枠が開放され、資本コストも削減できる。

特に日本の取引はドル調達の方向に偏る傾向があるので、信用不安や市場変動によって取引ができなくなることを避けるためにも、あらゆる方策を検討し始めておいても良いのではないかと思われる。