中銀に頼った流動性計画が可能になった?

昨日9/26に行われたFRBのBarr副議長のスピーチが興味深い。これまで金融当局は、銀行がストレス時にも自ら資金を確保し、存続できるように計画を立てなければならないというスタンスであった。つまり、銀行の内部流動性ストレステストにおいて、中央銀行に頼ることは許されないという、ある意味当然ともいえる前提となっていた。

また、中銀から流動性供与を受けたとなると、その銀行が危ないのではないかという憶測を呼ぶため、かなり危機的な状況になっても、中銀に助けを求めたくないといういわゆる”Stigma”の問題もあった。しかし、このため破綻してしまっては元も子もないので、FRBは中銀の流動性供給プログラムはどんどん使ってほしいという方向に変化してきた。

米国シリコンバレーバンクが迅速に連銀の資金供与を受けることができずに破綻したことを受け、FRBは普段からこのプログラムにアクセスできるよう、様々な改善をしてきた。今回は銀行が自ら危機時に対応するための流動性を確保すべきと述べてはいるものの、流動性ストレス時のプランに連銀窓口貸付や政府のレポプログラムが使えると断言している。

日本でも、銀行危機が起きたときは、日銀が最後の貸し手として緊急資金供与を行うだろうということは暗黙の了解となっていたと思う。だからこそ最後の貸し手と呼ばれていたはずだ。ただし、日銀に頼ったプランを立てるのはおかしいので、こうした資金にアクセスできないという前提で、流動性ストレス時のプランを立てるのが通常であった。しかし、コロナショック時には、日銀もStigmaを気にせず流動性供給プログラムを使ってほしいというニュアンスのことを述べており、実際にアクセスした銀行も多かった。

ここ2年くらいでこの流れは明らかになりつつあったが、今回はっきりと中銀に頼っても良いということが米国で明らかになったので、その他の国の金融規制にも影響を与えることは間違いない。おそらく日本でも同じような変化が起きてくるのだろう。

スピーチの内容はYouTubeでも見られるが、質疑応答でも確実にStigmaはないと言い切っており、今後は銀行の流動性計画のあり方が大きく変わることになる。最後にSLRについての質問も出ていたが、何も決まっていないというゼロ回答だったのが少し残念だったか、何らかの検討はされているようなので今後のアナウンスに注目したい。