予想通りではあるが、来年末から清算集中の義務付けが予定されている米国債についても、清算(Clearing)と取引執行(Execution)を分けるべきという意見が出てきた。
金利スワップなどの他の商品では、顧客のためにクライアントクリアリングサービスを提供することにより、自社での取引執行を促すこと利益相反とされている。このため、クライアントクリアリング取引を担当する部門と自社のトレーディング部門との間に情報障壁を設けるのが一般的だ。
クリアリングは他社で執行した取引情報も得ることになるため、その情報を使って自社のトレーダーが利益を上げようとするのは望ましくないという考え方だ。CFTCでスワップなどのクリアリングを推し進めてきたGensler氏がSECで国債のクリアリングを担当しているのだから既定路線ではある。
英語のトレーディング用語では、プライスコンペで負けて、他社に取引が取られたというときにDone Awayという言葉が良く使われる。一方、あまり現場では聞かないが、自社が勝って執行に至った取引をDone withという。現在米国債のクリアリングを独占しているFICCのSponsored Clearingでは、Done with、つまり自社で執行した取引のみをクリアリングするのが一般慣行になっている。これを、コンペに負けて他社に取られたDone Away取引についてもクリアリングするようにと、先週Gensler氏が発言した。
このように金融においては商品によって取引慣行が異なるケースが多かったが、最近ではすべてが統一される方向に向かっている。以前コメントしたレポのヘアカットも、参照する債券によって決めらる傾向が強かったが、Swapのようにカウンターパーティーの信用力に重きを置く動きが強まってきた。
日本でもレポのクリアリングを行っていたJGBCCがJSCCに統合され、リスク管理手法も同じようなものになりつつある。以前であれば、商品が異なるのだから、他のやり方は通用しないという意見が強かったが、そういう意見は通らなくなりつつある。同じように、日本は特殊だからというのも主張しずらくなってきているように感じる。独自のCDSのDC、NAFMIIなど、自国主導のやり方を貫こうとしている中国を除けば、あらゆる市場慣行が統一されていくことになるのだろう。