決済T+1化がシステム投資を拡大させる

米国の証券決済T+1化が始まり、トムネの需要が大きくなるという報道が以前からあった。これはTommorow Nextの略で、約定日の翌営業日スタート、翌々営業日エンドの取引をいう。約定日の翌営業日に取り組み、2営業日目に決済をするということになる。

例えば、ドル円の取引であれば、月曜に取引を約定し、月曜をValue Dateとした円売りドル買い(円買いドル売り)と火曜をValue Dateとした円買いドル売り(円売りドル売り)を行うといった取引を指す。T/Nと表記されることもある。

一方2営業日に取り組み、3営業日目に決済を行う取引をスポネといい、S/Nと表記することもある。

通常決済リスクを負わない形で取引をするためにCLSを通す場合は、スポット為替の決済はT+2となる。一方米国のT+1化の後は決済を早めるためにトムネを使うニーズが高まる可能性がある。しかしCLSを通さないとなると、相対取引となり決済リスクが残ってしまうので、売り買いを効率的にネットしていく必要がある。

様々な時間帯に異なる価格で約定される取引が多数あるとネッティング効率が悪くなるので、BloombergがT+1でのベンチマークのFixingを公表することを計画している。金利スワップでクーポンを統一したスワップを行ったり、CDSで固定スプレッドを統一するのと同じ原理だ。

そもそもこうした足の速い取引に対するリスク管理には昔からあまりフォーカスが当たってこなかった。カウンターパーティーリスクを合算する際に、全世界で取引をしている場合はNY Closeからバッチプロセスが走るシステムなどもあるだろうから、NYではT+1でのデータしか入手できず、アジアや欧州では、時差の関係からT+1.5、T+2になるということもあるだろう。

しかしT+2のデータだけを見ていては、そのデータを確認した瞬間には、かなりのT/Nが既に消えているかもしれない。また、1日前に行われた取引が計算に入っていないかもしれない。

決算機関はT+1の次はT+0という話が出てくる可能性も高いので、各金融機関ともリアルタイムに近い形でのリスク把握が求められるようになっていく。その時にデータを人の目で確認することは不可能なので、巨額のシステム投資が必要となる。だが、これをきちんとやっておかないと、何か問題があった場合に、数百億円の罰金を払うことになるかもしれないので、早めに準備を進めておくことが望まれる。