CDX Financialsの取引開始の延期

前回紹介した、米国の金融セクターのCDS インデックスであるCDX Financialsの取引開始が直前に延期された。IHS Markitのアナウンスによると、複数のディーラーによってRaiseされたRegulatory Concernによるものと書かれている。すべてのディーラーが取引できるよう、必要であれば何らかの変更を加え、as soon as possibleに市場参加者にアップデートするとのことだ。

銀行が自身のCDSを売ることはできないが、インデックスで1/25くらいならこれが可能になるかもしれないと前回のブログで書いたが、どうやらこの懸念が理由のようだ。これは昔から議論されていることであり、欧州では問題になっていない。てっきりこの懸念については解決し取引開始に至ったと思っていたが、取引自体は可能でも資本賦課をどう計算するかについて、懸念が残っていたものと推測される。

確かにこのインデックスを取引した時に、巨額の資本コストがかかるのであれば、ディーラーにとって取引をするインセンティブはない。または、銀行に対するカウンターパーティーリスクであるCVAをこのインデックスでヘッジした場合にヘッジ効果が認められるかはっきりしなかったからなのだろうか。いずれにしても取引開始予定日の1営業日前の延期発表は極めて異例だ。

米国の規制は、日本に比べて、細部まではっきりと決められていないことが多く、ルールベースというよりはプリンシパルベースのアプローチをとる規制が多い。このため、ルールにないから大丈夫だと思ったという言い訳は通じず、各金融機関が規制の精神に照らして自ら判断しなければならない。

規制としてはこの方が本来望ましいとは思うものの、罰金が巨額になっていることもあり、金融機関サイドとしては、極端に保守的な解釈するケーズが散見される。ひょっとしたら、今回のケースも、いくつかの銀行が資本賦課を保守的に見積もったため、取引ができないと判断したのかもしれない。

となると当局も交えた明確化が必要になってくるので、as soon as possibleに解決したいと書かれてはいるものの、しばらく時間がかかってしまうかもしれない。