米証券決済T+1化のインパクト

来年5/28から米国で始まる(カナダは5/27)証券決済のT+1化まであと半年を切った。これによって決済リスクの軽減と、効率性、流動性の向上が期待されているのだが、同時にオペレーショナルリスク、フェイルの増加が懸念される。これを受けて各社ともさらなる事務フローの標準化と自動化を進めている。

米国での準備はほぼゴールが見えてきた感はあるが、米国外では、時差の問題もあり懸念材料が尽きない。米国の問題ということもあり、米国外での意識がそれほど高まっていないようにも感じる。とは言え、アジアで行われるクロスボーダーの取引の約半分は米国がらみであるため、本来は日本を含むアジアへのインパクトは意外と大きい。もともと取引のAllocation、コンファメーション送付、取引のBookingとAffirmationなどにかかる時間はアジアの方が長かったので、その影響も必然的に大きくなる。

また、米株や米国債などの決済が短縮されるということは、それに関連して行われる為替の決済に対しても注意を払っておく必要がある。先月11月には、FXPA(FX Professionals Association)から「FXPA Buy Side Guidance in Preparation for T+1 Settlement」が出されている。ここでも自動化やシステム化の重要性が強調されている。今回の変更は証券に関するものだけだと思っていると、実はこれに関連するあらゆる取引の決済期間短縮化につながる可能性がある。

証券のフェイルというのはグローバルでは頻繁に起きており、そのためのフェイルチャージも決められている。当然フェイルは望ましくないことなのだが、ある程度マーケット慣行として認められていた。これをもう少し厳格化しようという動きがあった後でのT+1化なので、フェイルが増えて混乱が増幅する可能性も否定できない。だが、T+1化を進めても結局フェイルが多発してT+2がほとんどになってしまったということだと本末転倒となってしまう。結局この問題は標準化とテクノロジーによって解決するしかないので、システム投資をケチると、大きな問題に発展しかねない。

日本では、フェイルというと大きな事務ミスとみなす市場参加者も稀に存在するので、その意味では真面目な国民性が表れているのだが、T+1化の後に混乱が発生しないとも限らない。特に為替がからんでくると、CLS決済も進んでいない中でフェイルが起きると、余計な決済リスクを取ることになりかねない。ここまで高速の処理が要求されるようになると、巨額のシステム投資を避け、人海戦術で乗り切ろうというのはもはや成り立たなくなってくる。

日本でも、銀行証券、ブローカー、カストディアン、信託銀行、アセマネ等で共同して自動化を促進していった方が良いのだろう。特に時差を考慮するとT+1だとあまり時間に余裕がないため、為替周りが特に気になるところである。