中堅銀行に対する規制強化が始まる

次の金融危機は、規制強化の影響をもろに受けた大手銀行以外のところから起きると、このブログで何度か書いてきたが、もともとはシャドーバンキングのようなところを想定していた。SBBのような中堅銀行からこのような損失が出るとは、予想できなかったが、やはり銀行と言うのは、いちど危機が起きると不安の連鎖が起き、ついにはCSのような大規模銀行にも影響が及んでしまう。

冷静に数字だけを見れば、CSには十分な流動性バッファがあるように見えるのだが、ここまで世間の疑心暗鬼が重なってくると、資金流出が加速して、危機に陥らないとも限らない。これが金融機関経営の難しいところである。

中堅銀行に対しては、2017年から18年ごろに総資産$250bnに満たない銀行持ち株会社と$75bnを下回るノンバンクに対して、一部の資本、流動性規制やストレステストの要件緩和が行われた。SVBは$200bnを少し上回るくらいなので、この緩和の恩恵を受けていたものと思われる。

当然のことながら、こうした中小銀行に対する規制強化が声高に叫ばれている。また、総資産$700bn超の銀行に対しては、TLACを含む流動性規制がかけられているが、当初はこの閾値を$250bnまで下げるという話も出ていたが、これだとSVBのような規模の銀行をカバーできないことから、直近の報道では$100bnから$250bnの銀行ちも広げられると思われる。 LCRについても同様に対象銀行が広がる可能性が高い。このような規制強化は金融市場にどのような変化をもたらすのだろうか。

預金保険対象外の部分については、最低預入期間を設けたり、定期預金を増やそうとインセンティブが働く。途中解約のペナルティーなども上がっていくだろう。ファンディング、コストや資本コストが上がるため、銀行の収益性に関してはネガティブである。ただし大手銀行はすでにこのような規制の影響受けているので、インパクトは限定的だ。と言うよりは、中小銀行から預金が移ってくる可能性もあるので、大手銀行にとってはプラスの影響すらあるかもしれない。

こうした規制コストに対応できない銀行が出てくる可能性もあり、銀行の統廃合がさらに加速する可能性もある。

いずれにしてもToo Big to Failをターゲットにしていたこれまでの規制は、大きく方針変更せざるをえなくなり、今後の焦点は中小銀行にもフォーカスが当たっていることになろう。

米国債の流動性に注目が集まる

久しぶりに臨戦体制となった1週間だった。リーマンショックの初期と似たような雰囲気にも思えたが、マーケット変動は当時に比べても拡大してるように思えた。

特に取引流動性の枯渇が著しい。最も流動性があると思われていた米国債ですら、かなり乱高下し、取引スプレッドが上昇し、取引にかかる時間も長くなった。これがスワップやオプション取引にも波及している。

ICEのボラティリティーインデックスなどを見ても、コロナショック初期の変動を超えている。実は米国債の流動性問題が、各種資産やデリバティブ取引の変動を拡大させ、危機を増幅してるのかもしれない。ここまでの変動はかつてなかったと言う声も多く、ヘッジファンドが損失を被っていると言う報道も多い。スワップのb/oが4倍になったと言う報道もあった。ショートポジションをとっていたCTAの損失拡大も報じられている。

ここから更なる規制強化が予想されるが、それが流動性低下を加速される危険性もあるのではないか。実はこちらの方がリスクという気もする。規制強化により米国際取引から撤退をする投資家や銀行が増えると、市場流動性はさらに低下するだろう。それが金融全体にとって良いのかどうかよくわからないところである。