日銀の政策修正を巡って様々な憶測が飛び交ったことから、久しぶりに日本への注目が高まっている。ようやく金利が動き出したこともあり取引も活発になった。円金利スワップの取引量がAUDなどに比べても格段に縮小してしまったのは、市場規模というよりは金利が動かなかったからかと思われるので、今後は以前のような地位に戻っていくことが期待される。
それにしても相変わらずDomestic vs Foreignという構図は変わらない。昔は海外投資家には日本の情報が入らないからミスマッチが起きているのかと思っていたが、実はかなりの情報が英語でも取れるようになっているため、単純に考え方の違いなのだろう。海外で中銀vs投機筋がぶつかった時は、投機筋に軍配が上がることが多かったことも関係しているのかもしれない。
今回は共通担保オペの発表があった時は、その実効性を疑問視する声ばかりが海外からは聞かれたが、国内からは実はかなり効くのではないかという声も多かった。英語の名前が長いこともあるのか、海外ではなかなかその実態が伝わりにくい。ECBのLTROに似たようなものと言うと初めてAhaと言われる。
初日の5年物のオペは平均落札価格が0.145%だったが、その時に0.42%とかの5年固定金利を受けるスワップを行えば、0.275%の利ザヤが確定できる。これを各銀行が行えば、スワップ金利が低下するという理論だ。また、JGBを買ってそれを担保にお金を借り、スワップを受けても良いし、借りた資金を変動貸しに回してスワップを受けても良い。
ただし、共通担保オペがバランスシートや資本計算上どのように扱われるかが問題である。バランスシートコストやROEを気にする外資にとってはあまり大きなインセンティブはない可能性もあるが、普通にレポができない資産等が担保に使えれば検討するところはあるかもしれない。
これを10年までの金利でできるというのだから、うまくいけば10年までの金利(JGBもスワップも)をコントロールできてしまうかもしれない。これが共通担保オペがスワップ版YCCと言われる所以なのだろう。10年超は生保などの需要が見込まれることから、結局日本の金利は、若干上昇するもののある程度のところで止まるというのが基本路線なのだろう。
Close out noticeをEmailで送れないかという検討が、昨年2022年9月にISDAで行われたと報じられている。特にコロナショック時に通知を郵送しようにもオフィスに誰もいないという問題があった時に、なぜEmailが使えないんだという素朴な疑問が持ち上がった。FAXは認められているのだが、そもそもFaxを使わない会社が増えてきており、在宅勤務ではこれを受け取るのも難しい。一応イメージとして受けとってEmailで送る機能もあるので、これを使っているところは問題ないが、最近では、そもそもFaxがどこにあるかを認識していない人も多い。
ISDAでは、クローズアウト関係の通知は、郵送かFaxと定められている。確かに1992年版、2002年版ISDAが作られたころは、まだFaxが普通に使われていたのだろうが、それからかなり時代が変わってしまった。以前は、金融機関の社員が通知を持参することもあったが、実は危険なのではないかという意見があったり、戦争が起きている国などはそもそも届くかどうかわからないという問題もある。ケイマン諸島などに住所だけあって、実際には誰もいないといったケースもあった。他にも、ISDAマスター契約の住所などは頻繁に更新されていないため、既にオフィスがなかったということも起きる。この場合は、とにかくそのオフィスがあったと思われる空き地に書類を置いてきたりといったことが本当に行われていた。
こう考えると通知をEmailで送れるようにするというのは、極めて自然なことのように思えるのだが、いざ移行しようとすると様々な問題が起きる。メールを見落とした場合、サーバーエラーで送れなかった場合、メールがブロックされていた場合、迷惑メールと判断されてしまった場合、ハッキングがあった場合、停電があった場合などにどうなるのかといった議論は尽きない。何をもって受け取ったという証拠になるのかという問題もある。
ここまでテクノロジーが進歩し、電子的コミュニケーションや送金が可能になりつつある中、こうした正式な通信手段に革新が起きないのは不思議である。そもそもこうした通知を送る回数が滅多にないことから、何も変化が起きていないのだろう。書留、受取確認の方法さえ確率してしまえば技術的に難しい問題ではないように思う。こうした受信確認サービスを行う会社を作れば、結構ニーズはあるのではないか。技術的にもそれほど難しいこととは思えない。そしてそれが法的に認められた通信手段とみなされれば、こうした郵送、Fax問題も解決する。とは言え、メールで受領確認の返信があった場合は法的に有効とするといった簡単な方法でも対応できてしまう可能性もある。
いずれにしても、郵送とFaxのみに頼った方法というのは早急に何とかしたいところである。日本国内だけであればそう大きな問題にならないが、どこかの島や、外国の片田舎のようなところに通知を送るのはそれなりに困難である。Faxもあと10年もすれば持っているところが少なくなっていくのではないだろうか。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。