JSCC円金利スワップの月間取引量が過去最高に

JSCCの金利スワップのシェアが上昇している。Clarusによると、昨年のJSCCのシェアは7割を超えたようだ。以前はLCHと50/50で市場を分け合っていたという記憶があり、2021年も63%だったことから、LIBOR公表停止後かなりの取引がJSCCに移行し始めているように見える。LCHがUSDやEURなどの主要通貨で97%を超えるシェアを保っており、ASXという地場のCCPが存在するAUDでも92%のシェアを占めていることを考えると、日本円だけが唯一メジャーCCPでないことになる。

JSCCの金利スワップクリアリングは2012年10月から清算を開始しているが、毎月の取引量は以下のように順調に拡大している。証拠金規制の段階導入が進んだことも追い風になっている。一瞬取引量が拡大したTIBORも最近はシェアがめっきり少なくなっており、完全にTONAが主流になっている。

https://www.jpx.co.jp/jscc/toukei_irs.html

2020年、2021年に若干取引が減ったように見えるのは、おそらくコロナショックによる在宅勤務や、LIBOR改革を巡る混乱が関係しているものと思われる。LIBORからTONAに移行した後は、順調に取引量が伸びており、特に最近は、日銀の政策変更を期待する海外勢の動きなどもあり、日本の金利スワップ市場が活況を呈している。

年末は通常取引が少なくなるのだが、先月は日銀のYCCの変動幅拡大の影響もあり、月間取引量が過去最高を記録している。さらにJSCCの統計で1月の取引量を拾ってみると、1/20現在で、この過去最高の12月の取引量を既に上回っている。今月更に過去最高を更新するのは間違いない。

グローバルの統計上は、円金利市場のプレゼンスが縮小し、AUDなどに後れを取っているのを先月指摘したが、YCCによって取引量が抑えられて取引量が少なくなっていたという事情もあるのかもしれない。その意味ではようやくYCC前の状態に戻ったということであり、今後日本円金利スワップ市場の巻き返しが期待される。

カウンターパーティーリスク管理に関するECBのレビュー

先週1/13にECBのブログにおいて、カウンターパーティーリスクに関するコメントが出ている。

2021年に金利低下によるイールドハンティングが続いたため、リスクが高く、透明性の低いNBFIsがエクスポージャーを増やすインセンティブが生まれたことを懸念している。NBFIsは先週も説明したようにヘッジファンドのようなノンバンクセクターを指すが、最近はこのNBFIを巡るコメントが多数当局から出されるようになってきた。

ECBでは、昨年欧州で活動する銀行23行を対象に、NBFIsのカウンターパーティーリスクに関するレビューを行っている。ロシアのウクライナ侵攻を受けた市場変動によって、エネルギー関連会社やコモディティトレーディングハウスもレビューの対象に加えている。

いくつかの点において、当局が期待するレベルのリスク管理ができていないとの指摘がみられ、単に規制に従うだけでは不十分で、更に進んだリスク管理が求められている。

また、2nd LineのDue Deligenceプロセスの改善が期待されており、情報を出さないところには枠を与えるべきでないという指摘がある。年金基金などもNBFIに含まれることを考えると、預かり資産やレバレッジ、運用方針等を開示しないところとは、取引を抑制すべきという立場をとっているようだ。

また、複雑なリスクを取っているところに対しては、Risk Appetite Statementにこれを記載すべきという主張もなされている。担保の流動性、再構築が困難な取引が含まれるため、リスク量が大きいのがその理由だ。銀行はリミットの設定に当たって、これらの要素も勘案しなければならない。単に顧客の信用力だけを見るのではなく、テイルイベントに対して耐性があるかもチェックしなければならない。こうしたリスクは危機時に増幅するので当然だろう。

さらにストレステストなどの頻度を上げ、マージンショック、エクスポージャーの集中への対応も重要だ。こうした取引にあたっては、ビジネス部門の知識に依存しているにもかかわらず、それがリスク管理やトップマネジメントへの報告に活かされていないというコメントがみられる。アルケゴスで指摘されたStatic Marginを問題視するコメントもある。担保授受のモニタリングの重要性も指摘されており、担保の遅れなどの情報が、ウォッチリストの作成に際して活かされなければならない。

こうした指摘はオフサイトの検査や実地検査によって確認していくとのことなので、今後の検査にあたっては、こうしたカウンターパーティーリスク周りのプロセスの見直しと拡充が必要になるだろう。昨今は各当局が歩調を合わせることもあるので、日本でもこうした内容には注意を払っておく必要がある。