最近各国当局からノンバンクセクターのリスクについて懸念するコメントが相次いでいる。新たなNBFIsという略語も頻繁に使われるようになってきた。Non-Bank Financial Institutionsの略とのことだ。主に懸念の対象となっているのは、ヘッジファンド、年金基金、保険会社といったところだが、これにCCPやファミリーオフィスも加わる。
確かに最近のCrisisと言えば、コロナショック初期にヘッジファンドが現金確保に走った際の流動性危機、アルケゴスショック、英国LDIショック、ニッケルショックであり、これらはすべて銀行以外のリスクである。金融危機時には40%程度だったNBFIsのシェアが最近では50%に近づいていることも当局の関心を集めるきっかけとなっている。
金融危機時には銀行の健全性にフォーカスがあたり、各種規制強化が行われた。その効果もあり、銀行の行動は大きく変化し、潤沢な流動性と資本が確保され、過度のリスクテイクにも制限がかかった。そして、その副作用として、銀行が取れなくなったリスクが銀行外に流れ、同時に市場流動性が一気に低下した。つまり銀行マーケットメークにも支障が出てきているということだ。それを補う形でCitadelのような新たなマーケットメーカーがシェアを伸ばすとともに、流動性の中心がNBFIsにシフトしている。
直近ではBOEがNBFIsを含む主要金融マーケットに潜むリスクを測るためのストレステストを公表し、FSBもMMFの監督に関する2021年のガイダンスに対して各国がどのように対応してきたかを検証するとこのことだ。
いずれもますます悪化する市場流動性に注目しているように見える。そういえば、日銀のYCC修正の際にも市場機能の歪みを是正するためといった趣旨の文言があったように思う。CSなどが注目されているものの、今の規制環境の中では、銀行からの危機は起きないように思う。昨今あらゆる市場変動が激しくなってきたのは銀行の行動を縛りすぎた副作用なのではないか。確かに資本コストや各種規制を気にするため、銀行が取れるリスクは極度に低下している。銀行の健全性を保つにはこれがベストなのだが、マーケットにショックがあった際に逆をとれる市場参加者、リスクをWarehouseできる銀行が少なくなっている。
NBFIsに対して規制をかけるべきという意見ももっともではあるが、もう少し金融機関の流動性供給能力を高めるような策を打たないと、ますますNBFIsへのシフトが進むとともに、大きな市場変動が起き続けるようになると思う。