ターム物RFRを巡る混乱

USのターム物SOFRがインターバンクで取引できないことが問題となって久しい。6月くらいから、ARRCのタスクフォースで定期的に議論は続けられているようなのだが、未だに公式見解は出ていない。裏付けとなる取引がないままにターム物の取引量が増えてしまうと、LIBORの二の舞になるという懸念が未だ強いようだ。

もともとは確か昨年夏ごろに出たARRCのベストプラクティスガイダンスにおいて、エンドユーザーのキャッシュ商品のヘッジのみとされたのがきっかけだと思うが、CMEのライセンスの問題もあるようだ。ディーラーとしてはエンドユーザーの取引を受けると、とりあえず後決め複利のSOFRスワップでヘッジするしかないのだが、ターム物と通常のSOFRとのベーシスが数ベーシス動く環境の中では、日々のPLが出てしまう。

特にこれが7-8ベーシス動くとなると、そもそも取引をしてよいかという問題になる。何かの拍子で10bpを超えるような動きが発生すれば、取引が止まるほどのインパクトになるかもしれない。そもそもブローカースクリーンの存在しないターム物SOFRが正しくMarkされているかどうかと問題もある。ターム物SOFRリンクの社債を銀行が発行するという方法もあるが、今のところ発行量は少ない。

クリアリングのニーズもあるが、未だ取引量がそこまで増えておらず、デフォルトオークションでそのポジションを解消できるかどうかも不明なので、まだ時期尚早だろう。取引が増えて流動性が向上しなとクリアリングができないが、クリアリングできないと取引しにくいという鶏卵の状態になっている。

一方他のマーケットに目を転じると、ドル以外ではターム物のニーズはそれほど大きくない。もしかしたら、米国でローンのフォールバックにターム物を選んでしまったからこうなってしまったのかもしれない。確かに金利前決めは美しいが、要は金利決定から金利支払いまでの日数がもう少しあればよかっただけなのではないという意見も聞かれる。

日本も同じくフォールバックがターム物になっており、TORFが作られたが、これまでの米国の動向をみている限り、TORFの取引量が急速に増えるような見通しは残念ながら聞こえてこない。さすがに米国ではターム物SOFRは存続するだろうが、GBP、EURについては、ターム物の議論はほとんど進展がない。まだ結論を出すのは早いだろうが、他の通貨にも影響があるので、今後のドルターム物SOFRの動向には注目が集まる。

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