米国債取引のクリアリングが増える

ついに米国債市場改革の案がでてきた。9/14のSECのアナウンスメントによると、米国債と米国債レポのクリアリングの範囲をヘッジファンドなどの他の投資家に広げることが提案されている。現時点では清算集中義務を課す形ではなさそうだが、少なくともFICCで清算できる市場参加者は増えることになる。現状は13%がクリアリングされているのみだが、これが広がれば銀行にとっては所要資本が減ることになる。SECのすべてのコミッショナーが賛成したとのことなので、あとは業界の市中協議へと移る。

特に米系やバランスシート制約や資本制約によって米国債のレポができなくなっていたので、クリアリングが進めば流動性が向上するものと予想される。ただし、投資家にとってはコスト増につながることから、実際にどれくらいの取引が清算されるのかは定かではない。銀行が資本コスト削減分を価格に反映させ、クリアリングした方がコスト安ということになれば、すそ野が広がるかもしれないが、単にコストが上がるだけだと相対取引を継続したいという希望もあろう。

デリバティブの場合は、規制で清算集中義務をかけて強制的にクリアリングに移行させたが、清算集中義務をどの規模のファンドにまでかけるのかは非常に難しい問題である。おそらく証拠金規制対象のファンド等が一つの目安となろうが、これで取引が手控えられてしまえば元も子もない。今後の制度設計、どれくらいのファンドがCCPに移るかに注目したい。

コモディティ価格に対する欧州の当局介入

EU当局が天然ガス市場についての介入を強めている。あらゆる分析ペーパーを見てみても、かなり力を入れて分析している様が伺われる。世界中のリスクマネージャーも日々TTF/JKM/HHの価格を確認していることだろうが、これがかなりのマージンコールの混乱を引き起こしている。適格担保を広げるとか価格キャップを設けるといった話が議論されているが、今回は欧州の代表的価格指標であるTTFから別の指標にシフトするという話がEU当局から出ている。

LIBORからの移行ができたということは、当局の後押しがあれば市場をシフトさせることは可能なのだろうが、現状ではこれに変わる指標が見つからない。現状は欧州、アジア、米国のマーケットが結構独立して動いている。今はまだ時期尚早であるが、アジアにおける天然ガスの需要が年々高まっていることを考えると、今度はJKMが代表的指標として使われるようになるかもしれない。しかし、最近はJKMもかなり変動が激しくなっている。

他国では、天然ガスの輸入業者に対して政府保証をつけて市場の安定性を確保しようとしているという話も報道されていたが、これは日本にとっても重要な問題だと思う。欧州のようなコモディティデリバティブに関して提言を行うのは日本では経産省になるのだろうか。日本の場合は金融機関といよりは商社が重要な役割を果たしており、信用力が高く、エンドユーザーも大企業が多いので、それほど大きな問題にはなっていないのかもしれない。特にCCPの利用が少なく、相対取引が多いために、欧州のような当初証拠金の問題は少ないだろう。

とは言え、天然ガスが電力やガスの価格に影響を与えていることを考えると、ヘッジニーズが増えてくる可能性がある。今度何か危機があったときに、欧州は準備万端だが日本が混乱に陥らないよう、デリバティブ市場についての分析、提言をする機能を拡充していくべきなのかもしれない。ロシアの影響が軽微だからということなのだろうが、海外と日本の天然ガスへの関心度の違いが顕著なので気になるところである。