証拠金規制最終フェーズGo Live

証拠金規制の最終フェーズであるフェーズ6が始まった。これで、2016年から段階的に導入が行われてきた証拠金規制がすべて導入されたこととなる。ほぼ同時期に中国のネッティングに関しても法改正が行われ、中国の市場参加者証拠金規制の対象となっている(欧州規制に関しては6か月の猶予期間があるが)。

これで、ますます担保コストを意識した取引が行われることになるだろうし、担保が入ることによって取引が難しくなるものも出てきている。しかも、当初証拠金の計算に使われるSIMMモデルのパラメータ更新が毎年行われるため、昨今の市場変動を考えると、将来の担保拠出コストが非常に重要になってくるのは間違いない。

SIMMのパラメータは毎年12月に見直されるが、IMは過去4年とストレス期1年のデータから計算されるため、どの期間を使ってCalibrateするかによってIM所要額が変わってくる。Arcadiaによると、2021年12月にSIMMのパラメータ改訂(SIMM2.4)では、必要担保額が17%から33%増え、平均的には29%の増加と推計している。昨今の金利上昇を考えると担保額が増えるとともに担保拠出コストも上がっていることは想像に難くない。これを考慮すると全体的に1.5倍になっていてもおかしくないとのことだ。

一応IM Thresholdがあるので、計算したIM所要額が$50mmに満たない場合はカストディアンのセットアップをする必要はないが、常にIMを計算してモニタリングしていく必要がある。こうしたモデルのパラメーター変更によってIM所要額が上昇すれば、$50mmを上回る可能性も出てくる。突然これを上回ると2か月以内といった短期間の間に契約締結から分別管理のオペレーションを準備しなければならない。

コロナショックが始まった2020年、ロシアのウクライナ侵攻の影響を受けた最近のデータが今後入ってくると、特にコモディティや株式について、IMがかなり増える可能性がある。米金利の上昇もあるので、金利についてもIMが一定程度増えてもおかしくない。SIMMのパラメータ更新には1年のラグがあるため、最近のコモディティの市場変動の影響が出てくるのは2年後くらいになる可能性もある。

一部のExchange Marginは既に引き上げられているため、SIMMのパラメータ変更が遅れると、一時的とは言え取引所取引から相対取引にシフトさせたいという市場参加者が出てきてもおかしくない。各市場の相互関連性が強まっていることを考えると、こうしたArbitrageが起こらないように歩調を合わせていくことも重要だろう。

米国債の流動性低下が問題になっている

世界一の国債マーケットともいえる米国債の流動性低下が著しい。今年の6月からFEDが金融引き締めを始めたことによる影響が日々の取引に表れ始めている。米国債を取引するバイサイドによると$50mmを超えるようなサイズの取引の場合は、小分けにして取引をするようになっているという。しかも流動性の低いオフザランを避ける投資家が多くなっている。リーマンショックの時期を除くと過去20年で最低の流動性とも言われている。

取引量自体は月間$630bnとのこのことなので、そこそこの水準を保ってはいるが、取引しているトレーダーの感覚としては非常にやりにくいとのことだ。$100mm単位の取引の場合ヘッジが難しくなるので、$25mmとか$50mmに分けて取引しないとマーケットが動いてしまう。20年国債などはあまりの流動性のなさから取引を敬遠するディーラーさえいるとのことだ。

コロナショック来に資産買い入れを拡大し、マーケットに溢れた債券を急速に吸収しようとしているため、その反動がきている。銀行のトレーダーにとってみると、バランスシート規制があるために多くの在庫が抱えられない。価格が飛ぶので大きなサイズの取引に対してプライスを出すのがためらわれる。

しかし、日本からすると、米国債でここまで大騒ぎになっているのが不思議なくらいである。JGBとレーダーからしたら何を甘ったれたことをという感じだろう。日本国債はそもそももっと問題が深刻であり、流動性は比較にならないほど低い。回号が異なるだけで価格の動きが変わり、突然プライスが飛ぶことも多い。金利が動かないためトレーダーの数も減っており、今や収益のためというよりは、日本の市場を支えるためにボランティア活動をしているような錯覚にすら陥る時がある。

米国に必要なのは銀行のマーケットメイク機能の拡大であり、日本に必要なのは、金利の市場機能の回復なのだろう。