ロシアのCDSはどうなるか

ロシアを参照するCDSを巡る混乱が続いており、CDSをトリガーできる債券の範囲を限定するかが焦点となっている。もともとドル建てのロシア国債を参照資産としていた場合、ドルの支払いがなければ支払不履行でトリガーされるはずなのだが、これをルーブルで払った場合はどうなるかという問題である。DC(Determination Commiteee:クレジットイベント決定委員会)で議論が3/8-9で続けられているとRisk.netで報じられている。

確かに、今後起きうることを想定して前もってシナリオが描ければ混乱は少なくなる。日本の祝日である3/21にドル建てロシア国債の支払いが予定されており、3/16にはルーブルで支払うオプションのない国債の支払いもあると報じられている。猶予期間が30日あるが、これでCDS上のロシアデフォルトが確定する。

国の破産とCDSのトリガーイベントは異なっているのだが、日本ではCDSのトリガーをもって国が破産と報道されるのではないかと危惧される。ISDAのDCのセットアップを巡って国内が混乱したのも懐かしい記憶だ。ISDAが一国や企業の破綻を決めるとは何事だと勘違いした意見が多かったからだ。

欧州の定義ではクレジットイベントのトリガーは現地通貨建て債務であってはならず、オークションで引き渡す通貨は「特定通貨」であることが求められる。特定通貨はメジャー通貨を指すだろうから、ルーブルがこれに入っているとは思えない。これだけ読むとイベント認定の可能性が高いように思える。そしてオークションで引き渡し可能な債券は、制裁対象外のものに限られるだろうから、そのような債券に対するニーズが高まる。ここで債券価格の差も生まれるのだろう。

金融の世界で想定外はつきものだが、今回のケースは誰も想定できなかったのではないか。CDSの黎明期にもその仕組みについて様々な議論をしたが、こんなことが起きるとは個人的には夢にも想像していなかった。引き続き混乱が予想されるが、何らかのコンセンサスが得られることが期待される。