SOFR Term Rateはインターバンクで取引不可?

やはり金利指標の流動性というのは、徐々に変化するというよりは一気に進むものなのだろう。日本円の金利スワップについては、あっという間にLIBORからTONAにシフトした。ボールを一押しすればあっという間に転がると以前も書いたと思うが、転がるスピードは一気に加速した。


TONAだけでなく少し遅れていたUSDについてもSOFRの取引量が急上昇し、8月最終週の取引量は7月末に比べると56%上昇したと報道されている。

一方ARRCからはターム物RFRの利用についてのFAQが公表されている。以前CMEのターム物が正式に支持されたが、今回はそのターム物については、エンドユーザーの使用にとどめるべきであり、ディーラー間では使用が推奨されないと書かれている。原文を引用しよう。

The ARRC, however, does not support the use of the SOFR Term Rate for the vast majority of the derivatives markets. The ARRC does not recommend the trading of SOFR Term Rate derivatives in the
interdealer market because such activity could undermine trading activity in the underlying overnight SOFR derivatives that are needed to construct the SOFR term rate itself and could, thereby, compromise
the robustness of the rate and its corresponding utility to market participants.

デリバティブ市場における広範な利用が支持されておらず、特にインターバンクでは利用を控えるようにとのことだ。オーバーナイトSOFRよりターム物の取引が増えてしまうと、ターム物の裏付けとなっているオーバーナイトのSOFRの頑健性を損ねてしまうという、以前からの主張を繰り返している。

こうなるとローン、社債等の原資産をヘッジするためにエンドユーザーがターム物のIRSを行った場合、ディーラーはそのリスクをそのまま抱え込むことになる。確かにターム物とオーバーナイトの差はそれほど大きくなるのは不思議なので、これでもよいのかもしれないが、果たしてすべての通貨でこのやり方が通用するのかは定かでない。TORFについて同じようなRecommendationが出るとは若干思いにくいが、きっと議論にはなるだろう。

インターバンク市場が存在しなければ、後決め複利のSOFRとTerm SOFRのベーシスリスクが存在しなくなる?また、ブローカースクリーンもできないということになるのだろうか。であればベーシスが開いて損失がでることもなくなるので、ベーシスリスクの管理が必要なくなる。もしかしてARRCはそれを狙っているのかもしれない。でもこのベーシスマーケットができた方が流動性が上ががるような気もするのだがよくわからない。

日本でTORFをインターバンクで取引しないようにと言われたら、Quick社は困ってしまうのではないだろうか。当局も制限しようとまでは考えていなかったように思うが、ARRC推奨なので今後の議論に注目したい。しかし、日本でこれをやると、じゃあTIBORで良いやということになってしまわないだろうか。もう少し考えてみる必要がありそうだが、今晩はここまで。