米国債取引の清算集中

SLR(補完的レバレッジ比率)の計算から米国債を除くという一時的免除措置の期限が切れた際に、同時にSLRの改革を検討するとのアナウンスメントがあり、市場参加者の注目を集めた。未だその内容については、詳細が公になっていないが、一つの案としては米国債のCCPによる清算がある。

米銀数行が免除措置の延長が行われなかった影響を公表していたが、レバレッジ比率にして1%近い影響があった。これはかなりの影響であり、いかに免除措置のインパクトが大きかったかを物語っている。

米国政府の景気刺激策がかなりのサイズになっていることから、今後も米国債の流通市場の活性化は重要な課題となることは間違いない。現状は、Wells Fargoがスキャンダルの影響で資産規模の拡大を制限されており、市場にストレスがかかれば、以前のように米国債の流通に支障が生じる可能性は捨てきれない。

CCPで清算をすることによって、取引相手が信用力のあるCCPに変われば、資本賦課が減ることになり、銀行が米国債やレポ取引を行いやすくなる。そして、CCPを経由した取引については、SLRなどのバランスシート制約が軽減されることになるものと思われる。つまりSLRの悪化無しに米国債取引を継続することが可能になる。

政治家や当局の意見は二つに分かれているようだが、CCP化の反対意見の方が、若干理論的に弱いように見える。破綻時には納税者に損が押し付けられるという論調も目立つが、税金投入を前提としたCCPは一般的ではない。通常は十分な証拠金を取った上で、参加者が拠出する清算基金、CCP自身の保証金や資本で、かなりのストレスに耐えられるように設計されている。

この辺りの議論が進むと、銀行サイドにはあまり反対する理由もないことから、米国債取引はCCPに移っていくことになるものと予想している。技術的にはそれほど難しい話ではないので、比較的早いペースで移行が進んでいくのではないかと思う。