ターム物リスクフリーレートは主流になるのか

米国のLIBOR代替指標であるSOFRのターム物の流動性が上がらない。USD LIBORの公表が18か月延長された影響もあるのかもしれないが、ARRCが目標としていたスケジュールから大幅に遅れる見込みとなってきた。ARRCからもあきらめにも似たコメントが直近出されている。それでもUSではSOFRの先物が数千億円程度取引されているので日本よりはましかもしれない。CMEでは先物をベースに1,3,6か月物のターム物SOFRの取引を近日中に開始するとしている。

USDについては、日本と同じようにターム物RFRがローンや債券の推奨レートの中では上位に位置している。しかし、このままの流動性だと、ターム物RFR自体が実取引に基づかないレートになってしまい、市場操作の温床となったLIBORの二の舞となりかねない。

CCPにおけるディスカウント変更、3月5日のFCAアナウンスメントと、SOFRの流動性向上に資すると思われた重要イベントをこなしたが、SOFRスワップの流動性は一向に上がってこない。ユーロについても似たような状況でターム物€STRの取引は極めて少ない。日本のターム物のTOFRの確定値の公表がもうすぐ始まるのだろうが、海外がこんな状況の中日本だけが成功するとは思いにくい。

しかも米国では先物取引が増えているうえ、変動金利の米国債の発行等も見込まれている。SOFR参照債券の発行も進んでいる。米国ではターム物SOFR以外にもクレジットスプレッドを考慮したIceノBYI、BloombergのBSBY、Ameriborへのシフトも予想される。こうなるとやはり日本ではTIBORがしばらくは増えるのかもしれない。

一方英国ではターム物SONIAの使用に関する提案が公表されている。シンセティックLIBORのヘッジを含むあらゆるケースでの使用が想定されているようだ。ターム物RFRの使用は10%程度とする当初の提案からすると、よりターム物RFRを許容するようになっているように見える。3/5のFCAのアナウンスメントで、Synthetic LIBORの計算方法が、ターム物RFR+スプレッドとされていたのも関係しているのかもしれない。日本の9月より5か月早く4/1より新規LIBOR取引が原則停止になるので、英国の進展は今後の参考になろう。

結論からすると、いつかはターム物RFRの流動性が上がってくるのだろうが、現在の市場関係者の想定よりは大分遅くなりそうだ。




円LIBORスワップは9月末で新規取引停止

昨日、日本円金利指標に関する検討委員会第21回会合資料が公開された。公開と同時にBloomberg上で、9月末に新規円スワップ停止のヘッドラインが出てマーケットがざわついた。

遅くとも9月末までに新規取引を停止すること、前倒しが可能であれば9月末を待つことなく積極的な対応を進めることとある。気配値提示も7月末にはLIBORからTONAに移行すべきとされている。個人的には若干遅い感もあるが、時期が明確になったのは望ましいことである。

もともとローンと債券に関しては6月末で停止というガイダンスになっており、デリバティブ取引についても何らかの目安が示されるだろうというのはある程度予想されたことであったが、驚きをもって迎えた市場参加者も多かったようだ。いずれにしても来年1月からはLIBOR公表停止なので、たとえ時期についてガイダンスが出なかったとしても、今年後半には移行が始まるのは想定通りである。

マーケットでは、TONA vs SOFRの通貨スワップやTONAベースのSwaptionなどの取引もちらほら見られはじめ、いよいよ移行が本格化する。とは言え、この段階になってもシステム、オペレーション的に準備ができていないところもあるだろうから、一旦TIBORに流れる動きもあるかもしれない。ひょっとしたらTORFに期待していたのかもしれないが、今年中にTORFの流動性が急速に上がるとは個人的には思っていない。早急にOISスワップに移行すべきだろう。

新規取引がシフトしていくと、当然過去の取引とのミスマッチが生じてくるのでレガシー契約の移行作業も進んでいくことが想定される。各種統計データを見ていると、OIS Swapの取引量はこれまでほとんど増えてきていない。個人的な予想としては、来週以降一旦TIBORが活発化し、徐々にOISが増えていくという流れになると思っている。