英国FCAのLIBOR移行に関するスピーチ

JSCCのデータによると昨年10-11月にかけてOIS取引が一時的に盛り上がったと思っていたのだが、その後この流れが加速する雰囲気が感じられない。一時期日本円TIBORとユーロ円TIBORのベーシスも動いたことがあったが、その動きも落ち着いてしまった。LIBOR移行に関しては、日本のマーケットは完全に待ちの状態になってしまっているようだ、

LIBORプロトコルが1/25に発効し、批准者も着々と増えてはいるが、実際の取引にはほとんど変化がみられない。流動性がないから移行が進まないというにわとり卵の問題なのかもしれないが、今の状態は坂の上で止まっている雪玉のようなものなのだろう。誰かが押してやれば玉は転がり始め、あっという間に雪崩のようにその流れが大きくなるはずなのだが、皆がその玉を周りから見守っているような感じだ。ディーラーはやらなければならないことはわかっているので横から押してはいるのだが、やはり投資家の上からの一押しがないと本格的に球は転がり始めない。あるいは当局がそれを押しても良いのだが、日本では業界のことは業界に任せるべきという雰囲気がある。

日本より進んでいる英国の例を見てみよう。FCAのEdwin Schooling Latterの1/26のスピーチを見ると、様々な踏み込んだ発言をしており、市場参加者も彼の発言にはかなり注意を払っている。

既に決まっているスケジュールであるが、英国では新規のLIBOR貸し出しは3月末以降はできない点を強調している。そしてデリバティブ取引のFallbackを合意するが重要とし、For many firms, it is a regulatory obligation to have fallback arrangementsと述べている。Fallbackをアレンジするのは多くの会社にとって、規制上の義務という言い方だ。

英ポンド建てスワップにおいてはCCPで清算されないOTCのスワップ全体の約9%であり、そのうちプロトコル批准者のポジションは85%に上る。未だ批准を終えていない参加者に対しては、すぐにでも批准するよう呼びかけている。

Tough Legacyと言われるLIBOR移行が困難な古い取引に対する対応としてSynthetic LIBORにも言及している。EURやCHFについてはSynthetic LIBORの必要はないだろうが、GBPについてはこれが必要であり、円とドルについてもその必要性について検討を続けるとしている。IBAの市中協議でどのような意見が寄せられたか、それに応じてIBAがどのような決断をするかに注目が集まる。発言内容を見ていると、そう遠くない将来に結果が公表されるように思える。LIBORとRFRのスプレッド調整の計算のトリガーとなるので、次に起こるイベントとしては最も重要だ。

スプレッドが決まれば、Synthetic LIBORのスプレッドも決まり、この辺りの詳細が次なる市中協議に直ちにかけられることになる。この意見募集の内容もある程度固まっているように思える。米ドルは18か月の猶予があり、GBPもSynthetic LIBORの利用がほぼ確実な中、やはり円の行方が最も不透明だ。

Synthetic LIBORの可能性はあるものの、事前移行が可能なのであれば、年末を待たずにすぐにCompunded RFR(複利のリスクフリーレート)にConvertするべきとも述べられている。

日本では年度末の3月に移行が進むとは思えないので、この間に出されるIBAやFCAからの発表に応じて4月以降急速に作業を進めることになるのだろう。