ソフトバンクの取引もあり、2020年は米国で株式オプション取引が大きく注目を集めた。11月の大統領選後もその勢いは衰えず、CBOEにおけるコールオプションの買いはプット買いに比べ、過去5年で最高レベルにまで増えている。株式の買いが株価上昇をもたらすのは当然として、コールオプションの買いは必ず株価上昇につながるのだろうか。
一時期はコールオプションの買いが増えればそれを売った証券会社がヘッジのために現物株を買い、株価が上昇すると言われていた。しかし、感染拡大を受けて家で時間を持て余す個人投資家がオプション市場になだれ込んでいるため、この上昇が持続的なものなのかは定かではない。
オプションの取引量はここ数年ほとんど変化がなかったが、感染が始まってからの取引急増には目を見張るものがある。何らかのきっかけでこの流れが逆流すると、一気に流れを変えてしまうかもしれない。日本のバブル期にも先物取引で大損をした投資家が後を絶たず、先物のイメージを悪化させた。
かといって中央銀行が巨額の金融緩和を続ける中、国債に投資するよりは株式という投資家が多くなるのも無理はない。2021年の中銀のバランスシート増は2020年の半分くらいだろうという予想もあるが、それでも金利上昇のシナリオは当面描きづらい。
2020年に業績が落ち込んだことから、2021年のS&P500の一株当たり利益は2割増を超えるだろうという予測もある。コストカットやバイバック、配当制限もあったので、業績がこれより良くなっても不思議でない。とは言っても株価収益率等の指標でみると、現在の株価水準はかなりOver-Valueされていると言えるので、かなりの収益アップが必要となる。
一方で社債の利回りは最低水準に落ち込み、すぐにはインフレになる気配もない。こうなるとやはり一定水準の資金が株式に流れるのだろう。問題はそれがどこまで続くかだが、特にこの株式のコールオプション買いの急増だけは、何かしっくりこない。オプションの買い手からすると、株価が急落してもプレミアムを失うだけで、大きな損を抱える訳ではない。だが、これまで続いてきたオプション取引が急減すれば、何らかの影響を与えるかもしれない。しばらくはCBOEのデータにも注目したい。
金融庁が米国CFTCと米国顧客のJPY SwapのJSCCクリアリングを交渉しているとRisk.netに書かれていた。Exempt DCOの立場でクリアリングできるような方向を模索してきたものの、なかなかまとまらないようだ。これが難しい場合はDCO登録をすることによって解決を図りたいというコメントも紹介されている。
確かにシンガポールのSGXはDCO登録をしていたと思うが、これは相当なハードルかと思う。かといって、倒産法制が異なる中Exempt Statusで米国顧客のJSCCクリアリングを認めるのも困難が伴う。以前から米国顧客の清算許可を巡っては様々なコメントが出され、その都度JSCC-LCHスプレッドが動いてきた。最近では、このスプレッドがかなり縮まり、市場の関心も低くなってしまったように感じる。
とは言え、日本のデリバティブ市場においては、国内投資家と海外投資家のフローを結び付けられないことが、市場の流動性向上の妨げになっているように思えてならない。その意味では、JSCCが米国顧客の清算を行う、あるいはLCHが国内市場参加者の縁切りスワップ清算を行うことによって、JSCC金利とLCH金利が収斂していくのが本当は望ましい。
先日海外投資家主導のJGB先物市場と国内投資家主導の現物市場が分断されているのではないかと書いたが、海外投資家主体のLCH金利とJGBの利回りやJSCCスワップ金利にも同じようなことが起きている。これにDTIBOR、ZTIBORの分断も加わり、もともと流動性が少ないマーケットがさらに非効率になってしまっている。国債の利回りが動かない中、LCHの円金利だけが海外投資家の動向によって動いてしまい、アセットスワップが思わぬ方向に動いてしまうことも増えたように思う。
今後後決め複利やTORFなどの金利指標へ以降していく中、あまりにも複数の金利が存在しているのはあまりにも非効率だ。日本の場合は後決め複利のConventionにシステムがついていけていない市場参加者も多いことから、TORFに期待する声も多いが、流動性がついて行っていない。何と言ってもStandardなOIS取引の利用者が海外投資家と大手金融機関に偏っているというのも問題だ。
今後のLIBOR改革の流れを考えるとLCH-JSCCベーシスはOISの違いになっていく。一時的にFallback Rate TONAができるだろうが、これは将来的にStandard TONAに変わるだろうから、なるべくStandard TONAかあるいはTORFに統一していく努力が必要なのだろう。システム、オペレーション対応を考えると最終的にはTORFが望ましいのだろうが、そのためにはOISの流動性がまず上がってこなければならない。
こうした混乱を終わらすためには、業界の強力なコンセンサス、または当局のガイダンスが必要なのかもしれない。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。