規制で委縮した銀行は、危機対応融資を増やせるか

金融機関はストレス時に備えて資本や流動性のバッファを持つことが義務付けられているが、このバッファを今回のコロナ対応等に使えるようにというのが当局の意図したところであった。

しかし、実際はこのバッファを進んで取り崩そうというところは少なく、意図したとおりにお金の流れが生まれていない。

確かに金融機関内部にいると、ここまでの規制強化に慣れきってしまったためか、使えと言われても躊躇してしまうという心情は理解できる。規制を満たすために必要な努力をしてきた日々を思うと、ここで緩めてしまってまたあのような思いをしたくないという心理が働いたとしても不思議ではない。

12/2には、米銀監督を担当するQuarles氏から、どうしてこのバッファが使われなかったのかについて検証を行い、今後のインセンティブメカニズムを考えたいという発言があった。

将来的にはバッファを利用するためのインセンティブを与えたり、逆に積極的にこれを利用するようなプレッシャーがかかることになるのかもしれない。

銀行としては配当支払いが年末まで制限されており、これが再開できるかどうかはストレステストの結果にも依存してくる。この結果は年末までに明らかになるようだが、一連のコメントを見ていると、ストレステストのシナリオ緩和なども行われているのではないかと勘繰ってしまう。

一方日本においては、規制がそれほど厳しくなかったためか、それとも銀行の社会的意義が重視されているためか、銀行が融資を増やそうという姿勢は海外より強く感じられたように思う。日本の場合は、当局の指導やコメントがあれば、銀行サイドがそれを察知し動くという形になっているようにも見える。

ストレステストなども海外のように厳格なルールのもとで計算するというよりは、個々の銀行の実情に合わせて柔軟な対応が取られているように思う。海外の金融機関にとってはわかりにくいことが多く批判もあろうが、現状の日本の金融はこれでうまく回っている。ただし、日本の国際金融ハブ構想などで海外からの進出が増えてくると、いろいろな点で調整が必要になってくるかもしれない。

USD LIBOR改革のスケジュール変更をめぐる追加情報

USD LIBOR18か月延期のニュースが出て(本当は延期をすることに対する意見募集を始めるよというアナウンスだが)、LIBOR移行のペースが減速する恐れが出てきた。あくまでもレガシー取引対応で、新規取引については何も変わらないはずなのだが、勘違いをしてしまった人も多い。

また、円など他の通貨については、予定通り2021末で公表停止することに対する市中協議となっているので、何ら変更があったわけではない。むしろUSDがタイミングを変更したのに円は変えなかったとみるべきなのだろうが、市場の期待は完全に円も延期という雰囲気に感じる。

早速ARRCからも移行スケジュールについてのガイダンスが出ており、ISDAのWebnarでも追加情報が公開されている。Webnarの中でも、FCAのSchooling Latterは、「The proposed extension to US dollar does not change the proposed end date for other currencies.」と言い切っており、他の通貨は予定通りと考えるのが自然だ。特にGBP LIBORについては、2021年末以降、パネル行がレートを出し続ける必要はないとも言っている。

USD LIBORについては、パネル行がレートを出し続けるという確証がないならば、このような提案はサポートしないとコメントしているため、おそらく何らかの会話があった上で、2021年末以降も引き続き、レートが存在するということを前提にしているようだ。

Webnarを聞く限り、EURとCHFについては確実に変更なしで、GBPはSynthetic LIBORによる対応、円はその次に大変だが特にコメントなし、ドルは延期というニュアンスと感じた。

いずれにしても1月末までは市中協議を終え、その後アナウンスがあるようなので、ここから数か月で様々なことが明らかになってくるのだろう。