LIBOR改革の進展に合わせて細かいベーシスが様々な動きを見せているが、いつもよくわからないのがTIBORである。全銀協のデータを見ていると、約2年半ぶりくらいにDTIBORが上がっている。これが動くのはほぼ2年半ぶりだろうか。
そもそも日本円TIBOR(DTIBOR)は国内行を中心とする15行をパネル行とする企業向け融資指標に使われており、無担保コール市場の実勢を反映させた指標、ユーロ円TIBOR(ZTIBOR)はオフショア市場の実勢を反映させた指標ということになっている。ZTIBORのパネル行は14行でDTIBORとあまり変わらない顔ぶれとなっている。
以前はこの二つの指標はほぼ同水準だったが、グラフに示されているように最近その乖離が大きくなっている(単位は%)。DTIBORとZTIBORの統合の予定やLIBOR改革が関係しているものと思われる。
3か月物や6か月物のFixingは上記のように離れているが、5年とか10年の長期になると、双方とも市場実勢に従うためか、似たような動きをしており、なんとなくLIBORに近くなっているように思える。5年ポイントを見ると、DTIBORの方が低く、ZTIBORの方がLIBORに近くなっている。10年は同じくらいだったが、最近5年のようにZTIBORの方がLIBORに近く(よりプラス方向)になり始めた。
このまま行くとZTIBORの長い方はどんどんLIBORに収斂していくのだろうか。将来的にDTIBORが残るということであれば、今後は長いところもDTIBORの流動性が上がっていき、ZTIBORやLIBORに近づいていくのだろうか。
そもそもIBOR改革の流れの中でTIBORが残っているというのは日本の特徴だが、一応TIBORは指標として適切とのお墨付きになっているので、今後も存続可能なレートとなっている。今後リスクフリーレートと棲み分けがどうなるかにも注目が集まる。
LIBOR改革関連で最もマーケットが動いているのは、もしかしたら、このTIBORがらみのレートなのかもしれない。米国のSOFR/FFベーシスで取引機会を狙っているヘッジファンドなどは、実はこのDTIBOR、ZTIBORで裁定機会を捉えた方が収益機会が大きいのではないかなどと思ってしまう。
米国企業の社債発行ペースが止まるところを知らない。年後半には失速すると思われていた投資適格級の社債発行は第三四半期も$267bnと非常に高水準となった。
3月にFRBが金利をゼロ近辺に引き下げ、社債買入を発表したことにより、資金が一気に社債市場に流れ込んだ。米国債金利が急速に下がる中、スプレッドに厚みの残る社債には引き続き資金が流入しているようだ。
とは言え、今後の原則を予想する声も多く、第四四半期は償還が新規発行を上回るだろうとするレポートも出ている。社債のバイバックのアナウンスメントも複数出始めている。過去10年で第三四半期までの発行額が$600bn-$800bnだったことを考えると、今年の$1.4tnはさすがにペースが速い。M&Aの減少もこれに拍車をかけるだろう。
当然ここからの景気動向、米大統領選の影響、今後の財政支援策等にもよってくるが、年末に向けてある程度落ち着いてくれば、債務削減に取り組もうという動きが出てくることが予想される。
ただし、長期的に見れば社債からの資金調達は続くことが予想され、銀行ローンから社債やその他の資金調達手段への調達の多様化の流れは止められないだろう。小規模な資金調達においてはいわゆるダイレクトレンディングによる資金調達が欧米中心に増えている。プライベートエクイティやソブリンウェルスファンドなどの資金がこういった資金調達に流れているようだ。感染拡大移行こうした資金調達手段の多様化には拍車がかかっているように見える。
こうした流れはやはり海外中心に広がっており、日本でイノベーションが起きる機運は相対的に低い。オーバーバーキングと言われて久しいが、わざわざ資金調達の多様化などの努力をしなくてもローンが得られるからということなのだろうか。日本の社債市場の発展も道半ばであり、いかに海外投資家の資金を惹きつけられるかが重要になってくる。
日本では株式のショートはできるものの、社債では難しい。CDSの流動性も極めて低い。社債を買ったら満期まで保有を続け、何も起きないことを願うというスタイルが多いように思う。
もしかしたら銀行が減ってくれば、いざという時のために銀行の与信枠を取っておくため、社債やその他の調達をメインにしようという会社も増えてくるのかもしれない。
2012年から金融規制・市場最新動向をお届けしてきました。今般アメブロから引っ越してきました。