日本は在宅勤務になると取引量が減る?

4-6月の第二四半期のJPY SwapのCCP清算額が久しぶりに400兆円を下回った。LCHのシェアがJSCCを上回ったのも久しぶりである。USDやEURも落ち込んでいるが、これらの通貨は第一四半期に取引量が拡大していた。日本の場合は450兆円くらいで安定していたため、360兆円程度への落ち込みはかなり大きい。

興味深いのは、この落ち込みのほとんどはJSCCから来ており、4月に緊急事態宣言が出で、多くの日本の市場参加者が在宅勤務へのシフトを余儀なくされたことも関係しているのかもしれない。

海外は、3月に在宅勤務へのシフトが起きたが、取引量が落ち込むこともなく、逆に市場の変動拡大により、取引量が拡大している。海外当局のSTP規制の影響もあってか、システム投資が完了していたため、たとえ自宅であっても、取引執行から決済までほぼ自動でプロセスできる仕組みが整っていたからかと思われる。

確かにConfirmation送付、取引ブッキング、決済、マージンコール等、日本ではかなりマニュアル作業が多いのは周知の事実であり、自動化、標準化というよりは、特別なマニュアル対応をすることにより顧客獲得競争をしてきたという側面もある。効率性よりも手厚いサービスを売りにしてきたのが裏目に出たとは言えないだろうか。

しかし、LCHで清算する海外勢や外資系が引き続き取引を続けているため、日本の円金利市場が海外勢の動向によって動くマーケットになってしまっている。特にLCH-JSCCベーシスの動きが目立つ。このままでは、大きな市場変動が起きた時にも国内勢が取り残されたり、海外勢の動きによって日本の市場が混乱したりしてしまうのではないだろうか。

確かに巨額のシステム投資を行って業務効率化を図ると、それらの職に従事していた従業員の仕事がなくなってしまう。人の雇用を守るためには自動化や標準化は避けたいという意図が働くのかもしれない。

ただし、機械は感染しないが人は感染する。もしかしたらコロナがこの流れに終止符を打つのかもしれない。

通貨スワップのRFR移行はどのように行われるのだろうか

昨日ドル建て社債のLIBOR移行対応の遅れについて書いたが、もう一つドルが関係するものに通貨スワップがある。日本円LIBORについてはUSD LIBORなどの他の通貨の動きを見てからと様子見が続いているが、通貨スワップはYen LegだけでなくドルLegもある。つまりUSD LIBORが移行するのであれば、片方のLegだけは移行をしなければならない。しかも通貨スワップはCCPでクリアされたものが事実上ないため、全てが相対の交渉となる。

移行時のスプレッドは過去5年間の中央値を使うことで合意形成はできているが、この5年間は通貨によって異なる可能性が高い。Libor Discontinuationのアナウンスメントが今年末までに出る可能性があるというFCA高官の発言もあったが、この5年間の計算は通貨スワップの場合かなり複雑になる。

ドルLegだけをまずは変更し、その後に円Legも変更するという二段階の価格変化が起きるということもあるのだろうか。それとも面倒だから遅い方に合わせて一気に変更するのだろうか。

この移行時期についてヒントを与えるものとしては、早ければ9月にも公表が見込まれているIBA(Ice Benchmark Administration)の市中協議の結果に注目が集まる。

今後ISDAのフォールバックプロトコルに批准した市場参加者と、批准していない参加者が存在する上に、通貨ごとにタイミングがずれるとなると、様々な組み合わせが存在することになり、かなり市場が混乱することが予想される。これまでは、EONIA-ESTRへのディスカウント変更、FFからSOFRへのディスカウント変更、USD IRSやGBP IRSの移行の話が中心だったが、そろそろ通貨スワップについても議論をしていく必要があるだろう。