米国ドル供給オペレーションが日本に与える影響

米国FRBがドル供給オペレーションを始めて3ヶ月になるが、引き続きこのスワップラインが使われ続けるかどうかに世界的に注目が集まっている。確かに3月にドルの調達コストが跳ね上がった時に、日本を含む多数の市場参加者がこれを利用することによりマーケットは落ち着きを見せた。コロナ関係の緊急オペレーションの中で最も効果のあったオペレーションと言えるだろう。

ただし、現状のレベルだとわざわざこのオペレーションに頼るよりはマーケットから調達した方が得策だろう。所謂Stigma問題(本当に資金調達が苦しいと思われてしまう等のリスク)もあるので、極力自らの資金調達を模索するインセンティブが働くというのもある。

まずは木曜に1000億ドル超が満期を迎えたが、今月末までに合計約3000億ドルが満期となる。Risk.netによれば、木曜の1000億ドルのうち300億ドルが日銀向けだったとされているので日本のシェアも大きい。全体では、日銀が2221億ドルで、世界全体の4469億ドルの約半分を占めている。欧州のECBを5割近く上回るというのはかなり大きい。

結局先週火曜の日銀オペレーションでは160億ドルと、初回の半分強だったので、利用額は減ったものの引き続き調達ニーズの強さが確認されることとなった。こうなるとFRBの今後の方針次第では日本の金融マーケットに大きな影響が及ぶのではないかと報道されている。裏を返せば、ドル資産に大きな投資を行っている日本勢が売りを浴びせれば米国市場に与える影響も大きくなるので、相互依存関係が強まっているとも言える。

個人的には160億ドルというのは思ったより多い印象だが、引き続き、日本企業にとってはドル資金調達というのは重要課題であり続けるのだろう。

GLOBALIZATIONからLOCALIZATIONへ

最近はグローバル化流れが終わり、自国第一主義への転換が進んでいる。ウィルス感染拡大により人の動きが制限され、国ごと週ごと地域ごとの政治運営が重要になってきているが、これは何もコロナによってのみもたらされたものではなく、数年前からの大きな流れだった。

移民排斥運動、英国のEUからの離脱、トランプ大統領の米国第一主義もそうだが、世界全体で協調していこうというよりは、自分の庭を守ろうという動きは世界中で見られる。日本でも〇〇ファーストとか、自分の周りを守ろうという動きは見られたが、各都道府県知事の動向がここまで注目されたことは過去になかったものと思われる。当時は不思議だった英国のEU離脱国民投票の結果も、実は時代を先取りしていたのかもしれず、コロナ後の世界においては他地域から隔離されている方がリスクも少ない。

本来であれば人類共生の方向に向かっていくのが望ましいはずなのだが、格差助長、貿易戦争、人種問題と、今まで溜っていたものが一気に噴き出した感じだ。私見(希望的観測?)ではあるが、こうした自国第一主義、自分さえ良ければという風潮は来年以降くらいからそろそろ終わりを迎えてくるように思う。

さてこのような流れの中金融でも当然国際協調は少なくなり、各地域で独自の規制を作る動きが出ている。CCPの自国主義もその一つだが、米国のクライアントは日本のCCPに参加できないし、海外CCPは日本で円CCPを手掛けることはできない。自国顧客を守るためには当然なのかもしれないが、例えばEUの顧客が米国のCCPで清算するのであれば、EUとしてはその米国CCPに、監督を含め様々な条件を課してくる。

今回はそのEUの流れに米国が待ったをかけた。Relariation(報復)という言葉で報道されているが、これを受けてEUも若干矛先を緩めた形だ。CMEやICEなどの米国CCPを細かく規制しようというなら、報復措置も辞さないということで、EUがESMAの提唱するCatch-allアプローチは断念することとなった。程度の差こそあれ米中貿易戦争と同じ構図だ。

また、Brexitによって英国がEUから離脱すると、当然EUとしては、EURのスワップが英国のCCPによって主に清算されるのは面白くないだろう。やはり国際協調というのは難しいものである。共通の目的を持っているはずのWHOでさえ、各国の意見調整が難しいのだから。