CVAヘッジに対する欧州の規制変更要請が大きくなっている

第一四半期決算で、大手銀行のXVA損失拡大したことが示すように、3月にクレジットスプレッドが拡大し、CVAヘッジが活発になっている。当然CVAデスクは参照資産である金利や為替のヘッジを行っているので、かなりのヘッジのアクティビティがあったと思われる。

米国では、こうしたCVAのヘッジはRWA(Risk Weighted Asset)に含まなくても良いので資本賦課がないが、欧州では、ヘッジではなく完全に自己勘定取引と同じように資本計算上扱われてしまう。こうしたCVAヘッジのためのポジションは、市場リスクRWAの中のかなりの部分を占めているものと推測される。FRTBによる新ルールではCVAヘッジのためのこうしたポジションは市場リスクRWAからは外せるが、この施行がコロナの関係で1年延期されている。

この点に関してロビー活動が欧州で行われているが、Risk.netの記事ではCVA関連のヘッジを市場リスク計測に含め、CVAとヘッジを一緒に計算することにより、こうしたインパクトを避けている銀行もあるようだ。昔からの問題ではあるが、こうした問題は一重に規制CVAと会計CVAの取り扱いが欧州で異なることにある。

RWAの計算の元となる市場リスクVaRの計算には、金利や為替の感応度は含まれていない。したがって、米国ではそのヘッジは市場リスクRWAの計算に含まない。しかし欧州では、CDSのみが考慮でき、金利、為替、コモディティなどその他のヘッジを含めることができないため、米系に比べて不利になっている。これを受けて欧州では米国のような免除措置を求める声が4月から活発化している。

やはりヘッジをすることによって不利になる現行の仕組みだと、ヘッジなどしない方が良いということになるので、規制と会計は極力平仄をそろえていかなければならない。

日本では、CVAの会計計上が一部始まったものの、そのSensitivityを日々計算して金利、為替などのヘッジをしているところはまだ少ないものと思われ、このような問題が起きていない。ヘッジをしていないのだから、それが市場リスクRWAを膨らませると言うことにならないからだ。ただしFRTBが入ってきて海外のような会計上の変更が行われれば、CVAヘッジが大きな問題になる可能性がある。

その意味では、日本ではFVAの会計計上を行っている銀行も少ないため、今回海外大手行が計上したようなXVA損失は出てこず、またヘッジもしていないため、上記のような市場リスクRWAの話も関係ない。ただし、航空会社に対してオイルヘッジなどを提供している場合は、XVAのヘッジをしていないため、海外の金融機関に比べ実際に破綻が起きた時の損失は一気に膨らむこととなる。また、海外金融機関のようにXVAリザーブを原資にポジションの再構築をするといったことができない。とは言え、もともとローンもBuy & Holdなので、それと同じと言えばそうなのだが。海外金融機関は今回のエアラインの苦境に対しては、CDSのヘッジとOil Swap等によるヘッジを行っているのである程度の損失制御ができている。やはり日本も徐々にこうした姿に近づけていく必要があるのだろう。