CCPの参加者破綻時の損失補償はどうあるべきか

Eurexが27日の金曜に主催したセミナーでCCPの損失補償について議論になったという記事が出ている。顧客資産を預かるアセマネやディーラーサイドからは、参加者破綻によって非デフォルト参加者の精算基金やVMGH(Valuation Margin Gains Haircutting)が使われた場合には、後々それが返還されるべきという意見が出されている。これに対し、CMEやEurexは当然反対の立場を取っている。

EUの議会でも話題になっているようだが、こうした事態が起きたときには管財人が公平に回収した資金を返却すべきというのはもっともらしい主張にも思えるが、今一つ府に落ちない。そもそも参加者破たん時には、その参加者のIMやGF(Guarantee Fund)が使われ、それでも足りなければ非デフォルト参加者のGFや勝ち分を諦めるVMGHへと進んでいく訳だが、CMEが述べているように、破綻参加者から後に回収があった場合は、当然それがCCPに返却され、それを一定の割当方法に基づいて非デフォルト参加者や顧客に返却するプロセスは現状の規則でも確立されている。ただし、それが不十分だったとしても、CCPの将来的な利益をもってさらに返却させるような仕組みにはなっていない。個人的には一旦破綻管理プロセスが終わった後は、破綻参加者の回収額を超えてCCPが補填するのは行き過ぎだと思うのだが、この点について意見が分かれているようである。

またIM Haircutについても意見が分かれているようだが、さすがに非デフォルト参加者のIMを破綻処理に組み込むのは個人的には反対である。IMは自分の破綻時に使われるのは構わないが、他社の破綻時にまで使われるものとなると、会計上、資本規制上の扱いも変わってきてしまうのではないか。

これらの点については、議会やこうしたセミナーでも意見集約ができていないので、様々な考え方があるのだろうが、マーケットインフラストラクチャーとしてのCCPの重要性と、参加者負担のバランスが崩れないように活発な議論が望まれる。

LIBOR改革の進捗についての海外当局の動きが加速

英国当局のFCAからアセマネ会社のCEO宛にLIBORからの移行を促すレターが先週木曜に送られたとFTが報じている。顧客からの要望を待つのではなく、自ら積極的にLIBORの使用を止めるようにとの通達だ。

LIBORからの移行が遅い銀行には中銀貸出の条件を厳格化するという話もある。2021年以降に満期を迎えるローンや債券も9月以降は新規で取り組むべきことは実質的にできなくなる模様だ。

記事にもあるように、FCAがここまで踏み込むのは異例とのことだが、さらに進めて責任者を指名させることもできると結ばれている。これはおそらく他の規制と同じように責任者を任命して、目標が達成できなかった際には、その個人が責めを負うということなのだろう。

確かに英国では、何か重大な問題があったときには責任者の個人資産の差し押さえをするという規制変更があってから、突然様々なプロセスが保守的になった。現在でも、英国法人が絡む意思決定だけは極端にConservativeと業界では言われているが、この個人責任の原則が関係しているものと予想される。

日本ではここまでする例は少ないが鉄道会社の事故で役員が裁判にかけられたりすることはあるので、全く新しい考えという訳ではない。いずれにしても、当局が業界に任せておいてはLIBOR移行は間に合わないと思ったのだろう。日本では、移行を急ぐようにとの発言が聞かれるくらいだと思うが、今後は同様の動きが加速していく可能性は高まっているものと思われる。