CEMからSA-CCRへの移行は進むか

米国当局は資本計算において従来のCEMからSA-CCRへの移行を、2022年1月1日の期限を待たずに、早ければ今年の4月には認めたが、日本や欧州の銀行はしばらくはCEMを使い続ける模様だ。CEMはいわゆる標準法のようなもので、想定元本に一定の掛け目を適用し、取引同士のネッティングを一定程度簡便法によって認めるものであるが、よりリスクを反映したSA-CCRよりは資本賦課が大きいことが多い。

欧州では早期適用を認める発言は聞かれていないため、米国が最初に資本削減の恩恵を被ることになる。顧客から受け取った担保と特にエクスポージャーの相殺ができるようになるため、特にクリアリング業務に対するインパクトは大きいものと予想される。とは言え、実際の計算をしてみるとそれほど効果は大きくなかったという声も聞かれるため、商品やポートフォリオによっては早期適用をしない方が良いということもあるようだ。

日本においては、元本に掛け目をかけるという方法は、そのシンプルさゆえかかなり広く使われており、資本計算のみならず銀行のリスク管理に使っているところもある。これによって一定の取引がかなり難しくなっており市場を歪めているのは明白なのだが、これを改善しようという声はあまり聞かれない。どんなに優良企業であっても外部格付がないために資本賦課が大きく取引ができなかったり、証券化関連の取引困難になったりという影響もあるのだが、取引毎に資本対比の収益性を考えるという慣行は、日本ではあまり一般的ではない。こうしたことの積み重ねが日本のROEの低さにつながっているような気がしてならない。