イギリスがEUを離脱し、フランスがユーロのクリアリングをEU域内で行うというプレッシャーを強め始めた。既にEUの金融規制を決める場にはイギリスは発言権を持たないため、今後こうした動きは続くのだろう。
ただ、現時点で全ユーロ金利スワップの9割をクリアするLCHからポジションを移管していくのは、市場参加者にとっては手間でしかない。EUのクリアリングハウスであるEurexも健闘しているものの、 異なる通貨間のネッティング効果もあるので、 LCHからのすべてのシェアを奪えるとは思えない。フランス財務省及びフランス中銀が市場参加者に対し、この移行が優先事項である旨と伝えたとの記事がロイターに出ていたが、今後最終権限を持っているECBがどのような態度に出るかに注目が集まる。LCHはあと1年程度は免除規定によりEU域内の顧客にクリアリングサービスの提供をできるが、その後どうなるかについては不透明性が残る。
もう一つのオプションは、レポ取引と同様に、LCHが現在のパリ現法であるLCH SAにすべてのポジションを移すというものだが、これでフランス側を満足させられるかも不明である。
これがこじれるようだと、既に米国現法を稼働させているLCHが米国シフトを進めるという、EUサイドにとっては望ましくない結果になることもあり、最終的には英国で同等性を確保しつつ現在の業務継続というのが妥当な線だと個人的には思う。