Brexit後のデリバティブ市場

かねてからの予想通り、EUがLCHなどのCCPに対するアクセスをBrexit後1年間延長することになりそうだ。3月で免除期限が来るはずだったが、1月31日に離脱となると2021年1月末まではデリバティブ市場に混乱は生じない模様だ。
同時に先週木曜には、EUからは、1月からESMAなどの規制当局により強力権限を与えるとのアナウンスも出ている。EU域内にラストリゾートとしてクリアリング業務を移管する可能性にも触れている。

CCP以外にもCompressionベンダーや周辺業務を行う会社もロンドンに数多く存在しており、以前不透明感は残るが、ひとまず当局はデリバティブ市場におけるクリアリングハウスの重要性には理解を示しているようだ。

しかしここまでCCPがデリバティブ市場の中心的インフラになってくると、CCPに対する規制はこれからも厳しくなるだろうし、どこまで営利企業であり続けられるかという疑問も出てくる。ある程度競争原理を働かせるべきということで複数CCPが存在している訳だが、その理由は利益水準を競うものではなく、リスク管理、安定性等において競い合うようになっている。

顧客獲得競争という意味では、極力手数料を下げ、所要担保額も下げれば、参加者を増やすこともできるかもしれないが、現状そのようなことをすれば当局から目を付けられるだけでなく、大手の参加者から批判の声が上がる。完全な資本主義とは異なる微妙なバランスのインセンティブシステムが出来上がっているように思う。もしかしたら銀行も同じ方向に進んでいるのかもしれない。

米国レポレート急騰に関するBISの分析

9月の米国レポレートの急騰の原因については、法人税支払い、当日の巨額決済、LCR等の規制、オペレーショナルエラー等様々な理由が挙げられているが、今月公表されたBISのQuarterly Reportでは一連の説明を試みている。主に以下のような分析だが、概ねマーケットの実感とも一致する。一部規制のインパクトにも触れているのが興味深い。

  • 米国レポ市場の資金の出し手は米銀大手4行に集中している。
  • これら4大銀の流動性は米国債に偏ってきており、資金提供能力が悪化している。
  • 同時にヘッジファンド等のレバレッジプレーヤーからの資金需要が旺盛になっている。
  • FRBの大規模資産購入によって銀行は準備預金を増やしていたが、2017年10月以降の買入縮小に伴い、現金から米国債に資金を大幅にシフトさせた。4大銀の国債保有は銀行が保有する国債全体の50%を超え、上位25行でカウントすると90%に至った。
  • FEDのバランスシート拡大がマネーマーケットの機能不全を招いた。以前のような短期市場を取引する経験のあるトレーダーがいなくなり、マーケットメーカーが少なくなり、これにLCR等の規制が加わり銀行が資金を融通するよりもためておくインセンティブが生まれた。
  • スポンサードレポによってMMFがHedge Fund等に資金を流すフローが生まれたが、9月からリミットの関係もあるのかMMFが資金提供を渋り始めた。

金持ちの銀行を利する規制緩和を闇雲に批判するのではなく、こうした客観的な分析に基づく規制改革が進むことに期待したい。