ISDAとGreenwichのレポートによるとバイサイドの市場参加者は、COVID-19の下での市場混乱時にボイストレーディングを増やしたとのことである。米国債の取引においては、電話による取引が2月の29%から4月には42%まで上昇したとのことだ。アンケート調査で17%がオートプライシングの電子取引を止めたとも言っている。
銀行のリスク許容度が下がったので流動性が低下したとあるが、確かにあの状況の中流動性を提供し続けるよりは、守りに入らざるを得ないというのは当然だろう。流動性が下がれば、ヘッジも難しくなるので、オートクォートやオートプライシングを止めるのは自然の行動だろう。短期のファンディングが問題となったというのもその通りである。結局これを止めることができたのは中央銀行の政策だったということだ。
規制強化による資本増強がこうした危機を乗り切るのに役立ったということだが、規制によって銀行が提供できる流動性やバランスシートが少なくなったという点も見逃せない。規制を厳しくして銀行がショックアブソーバーとしての役割を果たせなくなり、安全運転に徹したことにより金融機関の健全性が確保されたが、市場を支えることができるメインプレーヤーは中央銀行ということになった。当局が意図してこの状況を作り上げたのなら大したものだが、今後のマーケットは中央銀行の動向次第ということだ。
自ら流動性供給のできる米国や日本は問題ないのかもしれないが、ドル等の他国建て負債が多い国にとっては、米国の金融政策に全てを依存するということになってしまう。EUにしても、例えばイタリアやスペインはEURを無限に供給できる訳ではないので、同じような問題を抱えることになってしまった。米国が資金の流れを止めると新興国やEUの中の弱小国は一気にデフォルトへと向かいかねない。いわば人質を取られているようなものである。
その意味では自国建て通貨を守ったイギリスは、正しい行動をしたのかもしれないし、当時は世間を騒がせたBrexitの決断も、極めて正しい行動だったのかもしれない。もしかしたら、米国はこの状況を作り上げる為に規制強化に邁進したのだろうか。日本については、財政状況が最悪ではあるが、円建ての負債がメインなので、比較的恵まれている立場だと言えよう。