欧州天然ガスの価格に上限設定に対する批判の声が大きくなっている。以前紹介した通り、天然ガスの価格があまりに乱高下するため、マージンコールに応えられなくなる市場参加者が増え、当局サイドから価格をコントロールするための上限を設定することが提案された。
一定の動きがあった時に取引を止めるサーキットブレーカーは一般的だが、上限となると確かに批判の声が上がるのはもっともだろう。日経平均などの価格に上限があったら、それは不自然以外の何物でもない。とは言え、天然ガスのように、一時的にどこまで乱高下するかわからないという場合には気持ちもわからなくはない。ニッケルのように取引がキャンセルになるくらいなら上限を設定する方がましかもしれない。
だが、当然取引所が賛成するとは思えず、ICEなどは取引所をEUから移すという話まで報道されている。最近の動きをみていると、何となくEUの金融規制は迷走している印象はぬぐえない。
この上限は来年2月15日から適用されるが、以下の二つが条件となっている。
1.TTFの期近の契約が3日連続で€180/MWhを超える
2.同じTTFの価格が3日間連続でLNGの参照価格より€35/MWh高くなる。
これを超える価格はEUの取引所では認められないということになる。一たびこの条件を満たすと20営業日はそのまま上限が適用され、3日連続で€180/MWhを下回った時に解除される。一応時限措置となっているので来年の11月に報告書を出しその後の存続の可否を決めることになっているようだ。
確かにこれがEUだけの規制となれば、EU外では価格が動いていることになり、誰もEUで取引をしようとは思わなくなるのではないか。そうすると相対取引の参照価格もEUの指標ではなく別のものを見るようになるのかもしれない。インフレ率でもEM通貨の為替レートでも、どこまででも上がり続けることはあり、上限があるという話は個人的にには聞いたことがない。日銀のYCCだって25bpとか50bpとかで上限を設定しているのではなく、それを目掛けて指値オペを打っているだけだ。今回のICEの話をきっかけに価格上限の話が立ち消えになるのかもしれない。