金利上昇によって資本コストが重要に

金融庁の「バーゼル規制の概要」が6/14に更新された。バーゼル規制導入の経緯からその詳細、加えてレバレッジ比率、LCR、NSFRなどの各種資本規制についても非常にわかりやすくまとめられている。また、銀行ごとのSIBバッファ、内部格付手法採用行のリストも掲載されている。個人的には、バーゼル2から3になって各手法がどのように変わったか、どの手法であれば金融庁の承認が必要なのかについて赤字で示しているP14が非常にわかりやすい。

海外では資本バッファが重要になっており、通常の資本コストのみならずストレス時の損失を加味する形に代わってきている。これにより、取引リミットにストレス損失を組み込む動きも活発に見られる。日本の資本バッファは金融庁のバーゼル規制の概要P5に記載があるが、国際統一基準行に対する4つのバッファーが適用されている。

将来のストレスに備えた資本保全バッファーが2.5%なので、これはかなり大きい。海外で話題になるカウンター・シクリカル・バッファー(CCyB)については日本はゼロとなっている。また期末の取引流動性にまで影響を及ぼすG-SIBsバッファーについては、MUFGが1.5%、みずほ、SMFGが1%、D-SIBsバッファーは、SMTB、農中、野村、大和に0.5%が適用されている。

ちょっと興味をひかれたので主要行のリスクウェイトアセットを調べてみた(単位10億円)。銀行によってデータの時点が若干揃っていないが、大手が70兆円から110兆円程度、大手地銀は一桁兆円となっている。

資本構成を見てみると、予想通り信用リスクRWAが最大で6-7割を占めている。大手の中ではみずほのマーケットリスクRWAが目立つ。大手は信用リスクとCVAリスクを合わせて5~10兆円だが、地銀はほとんどこのリスクがない。静岡だけはCVAリスクが比較的大きく、伊予のマーケットリスクRWAの大きさも際立つ。

信用リスクRWAが大きいのは海外大手も同じだが、Credit Risk RWAが全体に占める割合で見ると、海外の銀行の方がむしろ大きいかもしれない。海外の場合、コントロール可能な市場リスクやCVAリスクなどを減らすべく、決算期末に大規模なRWA削減が行われるが、日本ではこうした動きはまだ見られない。

RORA(RWAに対する利益)の国際比較をすると米国や英国が1%後半にあるのに対し、日本の国際基準行14の平均は1%を下回り世界で最低レベルとなっている。イタリアやスペインなどでも1.5%は超えている。ただし、これまで資本効率を意識してこなかったことを考えると今後の上昇余地は大きい。「資本コストや株価を意識した経営」が叫ばれるようになってきたことから、後はどこが先に動くかという段階になっているように思える。

円金利がついに上昇し始め、金利リスクに関する資本規制についての見直しも入ってくる可能性がある。シリコンバレーバンクの例などもあるため、少なくとも当局検査などで説明を求められる可能性は高い。金利リスク分に対して資本を確保していく必要も出てくるだろう。こうなると、キャッシュリッチだから、国債が豊富にあるからという理由では不十分となり、金利リスクのヘッジ戦略や、限られたリソースの最適化が急務となるだろう。