規制が生み出す市場分断

ISDAのAGM(年次総会)がスペインはマドリッドで行われている。久々のリアル開催である。古き良き時代は、毎年参加していた人も多かっただろうが、コスト削減で最近は厳しくなりつつある。とは言え、デリバティブ市場の最新動向を得るには非常に有意義なイベントである。いくつかその内容についても報道がみられ始めているが、久しぶりに、EUにおける事業会社に対するCVA免除の話題が出ている。

米国と日本では事業会社向けだからといって、資本計算からCVAを除くということは行っていないのだが、欧州だけは免除が継続している。当初は時限措置だと思っていたのだが、どうやら恒久的措置になりそうという話が出ているようだ。RWAが全世界で注目を集め、ビジネスの最大の制約になっているのを考えるとこれは非常に大きな意味を持つ。米銀や邦銀が欧州の事業会社向けに無担保デリバティブ取引をするのが不可能になってもおかしくない。資本コストをきちんと織り込めば、欧州銀と競争するのは不可能になるからだ。これは、欧州の事業会社にとっても、欧州銀としか取引できなくなるため、プライスの悪化を意味する。

補完的レバレッジ比率、Collins Floorなど米国の資本規制は他国より厳しいが、このため、MMFファンド向け米国債のレポ取引銀行のトップ10に米銀が入らないなど、ビジネスに大きなインパクトが及んでいる。日本国債のレポでも米銀のシェアは欧州系に比べると格段に小さい。つまり、レポはフランス、カナダ、日系が、事業会社向けスワップは欧州系が支配するというように、市場の分断が起きていくことになるのだろう。SA-CCRを適用した米銀が短期の為替取引においてプレゼンスを落としているという話も報道されている。こうした市場分断はマーケット全体にとって望ましくないと思うのだが、世界的にもう少し協調することはできないのだろうか。