英国では、Sterling RFRワーキンググループのRoadmapに従って、着々と移行が進んでいる。やはり何かきっかけがないとマーケットの慣行というのは変わらないものなので、こうしたタイムラインが明確に示されることが実は一番大事なのではないかと思う。ここで示されているのは、以下のようなプランだ。
- 年末のGBP LIBORの停止に向けた準備
- 後決め複利SONIAの拡大に向けた努力
- 3月末で新規LIBOR参照ローン、債券、証券化商品、スワップなどの線形デリバティブ取引の停止
- LIBORから変換が必要な取引を3月末までに洗い出し、9月末までに変換作業を終えるべく努力
- スワップションなどの非線形デリバティブ取引については新規取引を6月末で停止するとともに、9月末までに変換を完了すべく努力
こうしたタイムラインの他にもクォートのConvention変更の日程も明らかにしており、それによって金融機関が行動を変えている。こうしてみるとほとんどの移行作業を9月末までには終わらせるという目標になっている。
翻って日本の状況を見ると、1だけが同じである。つまり日本は最終目標は同じなのに、他のすべての点において後れを取っている。米ドルは最終目標地点が18か月先なので、最も遅れているのが円である。
3については、LIBOR参照貸し出しの新規停止が日本では6月末なので3か月遅れ、線形デリバティブ取引については9月末なので半年遅れとなっている。
この英国のロードマップの中で、GBP LIBORにリンクしたレグを持つ通貨スワップの新規停止については、During Q2/Q3という言い方になっており、注にある細かい文字のところを見ると、It is acknowledged cross-currency RFR markets currently remain nascent, and that further developments will be necessary in 2021と書かれている。つまり、RFR通貨スワップについては、まだ移行の初期段階であり、厳格なタイムラインを示すまでには至っていないということのようだ。
したがって、GBP LIBOR参照取引の金利スワップは3月末、スワップションは6月末で停止となるが、通貨スワップについては9月末まで新規取引が行われる可能性があり、当然そのリスクヘッジとしての金利スワップがあれば、それも継続されるという理解になるのだろう。
ディーラーからすると、自分は顧客のフローを受けているだけだから、顧客がRFRレートの取引を依頼してこないと移行できないと言い、顧客サイドからすると、RFRの流動性が上がらないと移行できないと言い、お互いに何もできずにそのままになっている気がする。現実的には、流動性もないのに顧客がRFRで取引をしてくるとは思いにくいので、こうしたロードマップが示され、それを遵守すべく業界全体が動くというのが最も重要かと思う。