英国ではレバレッジ比率規制緩和はなさそう?

米国を中心に、レバレッジ比率規制の分母から自国の国債を除くという規制緩和が叫ばれているが、英国当局からこれを明確に反対するコメントが一昨日出された。英国中銀のSam Woodsは、こんなことをするのは、防寒用のジャケットや帽子、手袋を全て崖の下に捨てるようなものだと痛切に批判している。

英国の最低レバレッジ比率は3.25%で、米国のSLRほどではないものの、バーゼルの3%よりは少し高くなっている。もちろん計算方法は各国微妙に異なるので単純比較はできないが、米国が様々な緩和を進めている中、英国の厳しいスタンスが続けば、競争上のインパクトがじわじわと出てくる可能性がある。

とはいえ、言っていることは一理あり、シリコンバレーバンクなどに代表される米国中堅地銀の破綻は、米国債の金利リスクを持ちすぎたことから発生している。もちろん、満期保有目的の債券は売却さえしなければ損失は確定しないのだが、何らかの理由により売却を余儀なくされると一気に損失が膨らみ銀行が破綻の危機にさらされる。

現場の議論でもよくあることなのだが、CLOなどちょっとよくわからないものへの投資と、米国債への投資を比べると、誰もが米国債の方が安心と思ってしまう。そもそもクレジットリスクと金利リスクは違うのだが、特にローン中心の銀行においては、国債投資をリスクと見ないトップマネジメントがいるのも事実である。証券会社のトレーダーであれば、数億円程度のpv01を持つというのがどれだけRiskyなのかすぐにわかるのだろうが、ローンオフィサーが長かった経営トップなどは、10年債を数千億円保有するといっても、まあ何とかなるだろうと思ってしまう人もいる。

ただ、レバレッジ比率の問題は、これが国債であってもジャンク債であっても同じとして扱われてしまうところだ。英国当局の懸念も理解できるが、本来こうしたリスクは信用力に応じて判断すべきであり、レバレッジ比率という単純化された指標で金利リスクを管理しようとするのには若干無理がある。特に米国外ではIRRBBがあるのだから、ある程度の金利リスクはそちらで管理可能である。

誰もが正しいことは言っているのだが、すべてがグローバルにつながる金融においては、やはり統一されたルールというものがあった方が競争上の公平性を担保できるのだろう。とはいえ、最近はそれがますます難しくなっているので、ISDAやFIA、SIFMAなどの業界団体の重要性は高まってくるのだろう。