英国の金融規制がEU規制のMiFID IIとは一線を画す形になりそうだ。財務省のSunak氏からEUとは異なる英国独自の金融規制を進める旨の発言が出されている。同時に英財務省からはBrexit後のシティのビジョンを示した「A New Chapter for Financial Services」と題した文書が公表されている。投資を呼び込むために中国、インド、ブラジルなどと金融サービス協定を結ぶとしている。
確かにMiFID IIは金融業界でも評判が悪く、まだ米国Dodd Frankの方が評価が高い。金融ビジネスは規制によってかなり大きく変化するので、英国が金融規制をオープンでグローバルなものにできれば、Brexit後に失いかけた地位を取り戻すことができるかもしれない。LIBOR改革で見せたように、英国当局は金融に精通した人材が多く、欧州当局よりレベルが高いように思う。ソルベンシーIIの見直しも表明していることから銀行のみならず保険会社についてもインパクトがある。
しかし一方で、欧州規制等の同等性を得られる可能性は低くなった。欧州と英国で異なる規制環境の中でビジネスが行われるということは効率性の観点からは望ましくない。これまでは同等性を根拠にグローバルな金融取引が成り立ってきたが、金融機関側としては異なる規制対応プログラムを策定する必要がある。
とは言うものの、Brexit後に欧州にビジネスが移る危機感もあり、英国がこの問題に本腰を入れたというのは大きいと思う。単にマーケットを締め付けるだけでなく、市場参加者の意見を反映させたうえで新しい形の金融規制が生まれるかもしれない。そこに魅力を感じてロンドンが国際金融都市として栄えれば、欧州サイドにも規制見直しの機運が生まれるだろう。そしてこれは米国や日本にも影響を及ぼすことになる。コロナであらゆるビジネスが変化したのと同様に、Brexitによって、こうした変革が加速しているという見方もできる。
結局通常は変化を嫌うのが人類の常なので、天災、疫病、戦争、金融危機等のようなイベントによって、それまで変わらなかったものが変化していくのかもしれない。