FRBの年次ストレステストの結果が公表され、対象となった31行すべてについて、深刻なストレス環境にも耐えられると結論付けられた。今回のストレステストに基づいて最低所要資本に対して上乗せされるSCB(Stress Capital Buffer)が決められる。
早速業界団体のFinancial Services Forumから、これだけ十分な資本が既に積まれているのだから、ここから更に資本要件を厳格化するBasel III endgameは必要ないとの声明が出されている。
とは言っても業界では資本賦課に対する懸念の声ばかりが聞こえてくるので、これまで以上に資本を求められることが予想されている。不動産価格4割下落、失業率6%上昇といったシナリオは、結構なストレスだとは思うが、これが全く起きないとは言えないだろう。それでも31行総額で$685bnの損失を吸収しても資本が最低要件を満たすというのは、かなりの損失吸収能力が米銀にはあるということを示している。
それでもFRBのコメントによると、ストレス時のショック幅をそれほど変えなかったにもかかわらず、銀行の自己資本比率の低下幅が2.8%となったのは、銀行がリスクの高いビジネスを増やしており、経費も嵩んでいるとのことだ。特に過去最高レベルの増えた、クレジットカードビジネスにおけるリスク増加を懸念している。
大手行の結果を個別に見ると、ストレス時の自己資本は以下のようになっている。
JPM 12.5%
GS 8.5%
CITI 9.7%
BofA 9.4%
MS 10.6%
JPMやBoAは結果発表後、自らの計算はFRBの推計と若干異なるとコメントしている。しかしJPMのローン損失は平均より低い割合にとどまっており、健全性という意味では問題視されていない。
先週Basel IIIが当初案よる緩いものになるのではないかという記事も出ていたが、今後は大統領選に向けて、Basel III最終化がどのような方向に落ち着くのかに注目が集まる。