米短期市場の資金の流れ

昨日米短期市場についてコメントしたが、もう少しデータも含めてみてみたい。今年3月にSLR(補完的レバレッジ比率)の一時緩和が延長されなかったことにより、JPMやCitiといった米銀大手が事業会社と預金を減らすよう話をしているという報道があったが、行き場を失ったその資金はMMFに流れた。お金を借りたいという会社が多ければ資金があるのはありがたいのだが、資金ニーズがないため、現在の資本規制下では、預金増は収益性低下につながってしまう。MMFに流れ込んだ資金は以下のように昨年以降急増している。

https://www.financialresearch.gov/money-market-funds/

FRBはQEによって資産購入を続けているが、融資が増えない以上資産を売って現金をもらうインセンティブが銀行にはなくなる。米国債とFRBの準備預金がレバレッジ比率の計算から一時的に除外されていた時は良かったが、この期限が切れた今となっては預金増は重荷になってしまう。MMFに移してもらえば資産運用となるためSLRの計算には含まれない。

米銀大手3行の預金額は、2019年末から2020年末までに約3兆ドルから約4兆ドルへと増えたが、ローンの方は2兆ドル程度で一定である。優先株の発行等によりティア1資本を増やしてSLRの改善に努めてはいるものの、今年の第一四半期にも預金は約2500億ドル増えているため、預金は銀行経営の重しでしかなくなってきた。

企業はMMFに資金を移し、MMFは結局短期国債であるT-Billに投資をすることになるが、このT-billの発行額が減少している。となるとお金の行き場がなくなってしまったため、FRBはRRP(リバースレポプログラム)によって国債を市場に提供した。6月のデータはまだないが、このRRPの利用額を国債に絞ってグラフにしてみると以下のようになる。

https://www.financialresearch.gov/money-market-funds/federal-reserve-repo-facility-total-utilization-and-mmfs-participation/

2017年くらいにもRRPが使われていたが最近はほとんど利用がなかった。それが一気に4月に3500億ドルを超えてきている。国債のみかどうか定かではないが、報道によるとこれが直近7500億ドルを超えてきた。

こうして改めてデータを見てみると、かなりマーケットの流れが変わってきているのを改めて実感した。やはりSLRの見直しは急務のように思える。