米国FedNowのアナウンスメント

先週木曜日、米国FRBが即時資金決済のFedNowシステムの立ち上げを発表した。これを使えば、24時間いつでも企業向け、個人向けの送金が瞬時に可能になる。FRBの発表によると当初参加者は一部の銀行に限ら、完全に利用が拡大するには数年かかる見込みである。

PayPayやLine Payなどで友人に送金をすれば、瞬時に送金が行われるため、すでに実現しているのではないかと言われるかもしれないが、実際に銀行に資金を入金し、それを現金として使うには時間がかかる。結局中小企業の資金繰り問題は、こうしたスマホ送金では完全には解決することができない。

この米国のプロジェクトは8年をかけて議論されてきたそうだが、これにより、給料日支払いなどの事前決済やつなぎ資金を提供する金融サービスの必要性がなくなる。大手銀行間の決済システムもあるが、中小銀行などの参加が限定的であり、完全にすべての決済がここを通っているわけではない。

メキシコやブラジルなど、他の国でも同様の即時決済システムの構築は進んでいる。これが可能になれば、金融危機時の即時資金供給なども可能になる。

何よりもこれがデリバティブ市場の決済にも使えるようになれば、金融システミックリスク軽減につながる。現在のカウンターパーティーリスク管理の仕組みは、資金の不払いがあってからポジションを完全にクローズするのに2週間程度もかかるという前提で構築されている。当然少し保守的にはなっているのだが、前日末のマーケットをもとに時価評価し、マージンコールを掛ける。そしてその金額が確認できたら送金支持をして次の日の夜中が期限となる。それで送金が確認できなければ潜在的デフォルトの通知を行い、その後の猶予期間を経てデフォルト通知となる。

本来であれば時価評価を共通業界プラットフォームの中で瞬時に把握し、即時決済を行えば、ここまでの時間は必要ではなくなる。当初証拠金などもこうした時間を考慮して決められているので、即時決済が確保されるのであれば証拠金削減も可能になる。これはCCPなどで決済されている取引についても同様である。

日本もRTGSの仕組みがあるが、金融システミックリスク削減のために、決済周りの高度化をもっと推し進めても良いと思う。