米国債クリアリング規制延期?

2025年末の米国債のクリアリング義務付け開始まであと1年1か月となってきた。その割にはまだDone With、Done Awayモデルの議論に結論がついていない。

Done With/Awayとは、通常顧客が取引のプライスを複数のディーラーに取りに行くときに使われることがである。ディーラーとしては自分が出したプライスで決まると、Done withまたは単にDoneとなるが、他のディーラーがより良いプライスを出したため、コンペで負けるような場合、Done Awayまたは単にAwayという。Doneになった場合は、Cover(2番目に良かったプライス)を聞いて自分が極端に良いプライスを出していなかったかを確認したりする。

OTCクリアリングの世界では、自らがクリアリングブローカーとなることによって、取引のExecutionも自分のところで行うよう働きかけることが禁じられている。少なくともClearing BrokerとExecution Brokerは対等にプライスで競わなければならない。クリアリングをしていない他のディーラー(Execution Broker)が不利にならないよう、適切な競争を担保するための仕組みである。

OTCクリアリングの世界の方がなじみがあるので、Done Awayを求めるバイサイドの意見も良くわかる。FICCの米国債クリアリングでは、Done withが認められている。つまり、ClearingとExecutionをセットで売り込むことができる。CMEやICEなど、新たに米国債クリアリングに参入しようとしているCCPは、OTCと同じようにDone Awayモデルを目指しているようだ。

FICCも各種ルール変更を計画しているようだが、この段階でもまだ内容が明らかになっておらず、当局承認も得られていないようだ。経験上、米国やEUにおいては、こうしたルールの確定は1年前までに行われていることが多い。つまり、2025年末という期限はかなり厳しくなっていると言える。仕組みが確定していないとシステム開発もできないし、各種ベンダーとの接続作業も本格的には進められない。

こうなると、米国債のクリアリングは2026年6月末、レポクリアリングは2026年末などに延期されるかもしれない。また他のCCPの承認プロセスが遅れれば、更に延期という話にもなりそうだ。