米国債クリアリング規制の1年延期

ここでも何度か書いてきたが、予想通り米国債の集中清算義務規制の施行延期が発表された。米国債の現物が2026年12月31日、レポが2027年6月30日に延期される。大方の予想であった2/26のSECのミーティングを待たずに、25日には早々と発表されていたところを見ると、もうかなり前から固まっていたのだろう。もしかしたらゲンスラー氏辞任の直後にはほぼ確定的になっていたのかもしれない。

これでCCPサイドもクリアリングする際の方式を固めたり、ルールブックの改正に時間をかけることができるようになる。新規参入予定のCCPも取引執行とクリアリングを分けるいわゆるDone Awayモデルの詳細を詰めることができる。どうしても金利スワップなどOTCクリアリングに慣れた身からすると取引執行をしたディーラーとクリアリングブローカーが異なることがありうるDone Awayモデルの方が馴染みやすい。執行したところがクリアリングをするということになると、多くのディーラーのプライスを比較するのが難しくなり、囲い込みができるディーラーとしてはメリットがあるだろうが、顧客はOTCと同じモデルを好むと思われる。

証拠金規制の時のようにフェーズに分けてGo Liveをするのではなく今年の年末に一斉に導入するとなると、契約やオペレーションの準備が間に合わず年末の流動性がひっ迫するリスクなども懸念されていたので、まずは一安心といったところか。ただし、特に日本やアジアの理解度や準備は遅れていたので、これで時間があるからといってこれまでの作業をストップさせるのは若干危険だろう。

米国債クリアリングに関しては、FICCとCMEが現物、レポ、先物のクロスマージンサービスを提供する予定になっているが、これに関しても銀行サイドの分析が完全には終わっていない。オフバランスのデリバティブとオンバランスのレポが資本規制上ネッティングできるかどうかは、慎重に精査する必要がある。

日本でもレポと金利スワップをパッケージで取引するヘッジファンドの中には、リスクが相殺されているのだからIMやレポのヘアカットを引き下げるべきと交渉するところもあったが、ISDAとGMRAでネッティングができるか、担保を融通しあえるかというのは全く別問題である。

クロスマージンという言葉の響きが良いからか、その効果が若干過大評価されているような気もする。確かにクロスマージンがないよりはあった方が担保効率は良くなるのだろうが、実際にそれほどクロスマージンの効果が得られていないという状況も多いのではないかと予想される。

さて、ここで1年の猶予ができたので、こうしたネッティング、クロスマージン、クリアリングの手法も含めて、何が最適なやり方なのかについての議論が活発化することになろう。