米国債クリアリングの準備が進まない

通常、規制施行開始の1年前までに詳細が固まっていない場合は、規制の施行延期が行われることが多いと思っていたが、米国債のクリアリング規制に関しては今のところ延期の話が出てこない。トランプ政権の影響も、まだデリバティブ規制などに及んできていない。

クリアリングブローカーである金融機関は、顧客との契約を年末までに変更しなければならないが、CCPサイドのルールブックも最近変更されたばかりで、その内容を精査して、契約のひな型を作るにはもう少し時間がかかる。顧客資産の分別管理、クリアリングを行わなず執行だけを行うディーラーを使えるようにするモデルなど、いまだ固まっていない内容が多い。

現状ではFICCが唯一のCCPだが、CME、ICEなどが参入をすることになっている。それぞれのCCPがどのようなモデルになるのか、それに応じてどのように分別管理や担保管理のやり方を決めなければならないが、あまりに時間が少ない。SIFMAが標準的な契約のテンプレートを作成しようとしているが、この作業にはまだ時間がかかりそうだ。

金融機関サイドでは、ネッティングオピニオンなどを取って、どの程度の資本コストになるかを正確に予測するのも重要である。FICCとCMEは国債取引、レポ、先物間でのクロスマージンを提供する予定だが、クリアリングのそれぞれの顧客レベルでクロスマージンのベネフィットが得られるかも精査しなければならない。

また、改革が約束されていたSLRについても何らアナウンスがでておらず、G-SIBサーチャージの引き続き制約となる。金融機関サイドも、いくら規制だから顧客を助けるためにクリアリングを提供しようと頑張っても、資本コストが大きく赤字になるようだと、今一つ本腰を入れて作業が進めにくい。これはOTCクリアリングでも明らかになったことである。CCPでの集中清算を進めようと努力したら、あまりにも資本コストがかかるため、ビジネスとして成り立たなくなる可能性は否定できない。

こうした数々の課題を考えると、やはり延期しかないのではないかと思えてくる。そうなると来年6月が国債、再来年末がレポというタイムラインが適当なのではないだろうか。延期されないとなると、日本でも対象となる市場参加者が一定程度いるため、これから急ピッチで契約やオペレーションの準備を整えなければならないだろう。